ホンダとの統合は破談へ、日産「自主再建」の茨道 「単独」で将来描けず、感情的決裂は両社に痛手

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経営統合がなくなった場合、真っ先に問題となるのは日産再建の行方だ。

日産の2024年4~9月期は営業利益が前年同期比9割減、本業である自動車事業のフリーキャッシュフローは4483億円のマイナスに転落。とくに足を引っ張ったのは、グローバル販売台数の4割弱を占める北米。商品力の弱さをインセンティブ(販売奨励金)の大量投下でカバーする戦略が破綻。北米事業の2024年4~9月期は41億円の営業損失になった。

世界最大市場である中国での販売の落ち込みも止まらない。中国市場では急速なEV(電気自動車)普及と中国メーカーの躍進によって、欧米大手や日本勢も軒並み苦戦している。

日産の苦境の背景には、グローバルで340万台の販売に対して生産能力が500万台ある「能力過剰」と、電動車の中で需要が拡大しているHV(ハイブリッド車)を含めた「商品ラインナップの競争力欠如」という根深い問題がある。

日産内部では「自主再建」を目指す声も上がるが、単独での経営再建は困難な状況だ。しかも、将来に向けてEVやソフトウェアへの巨額投資を行っていかなくてはならない。自力での復活が難しければ、支援者を探して漂流することになる。

「日産内ではホンハイを推す声も複数あるようだ」(日産関係者)。昨年来、日産買収に意欲を見せていた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が再び動き出す可能性がある。ホンハイ以外でもホンダに代わるパートナー探しは急務となるだろう。

ホンダも新たなパートナー探しが必要に

ホンダにとっても日産との物別れは今後の成長戦略に影を落とすことになる。EVに加えて、ソフトウェア領域でも巨額の資金が必要になるのはホンダも同様。開発リソースの確保や投資負担の軽減のためにもパートナー探しは欠かせない。

アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)との量販価格帯の中小型EV開発は白紙に。自動運転領域でもGMと協業していたが、GMの自動運転タクシー事業撤退に伴い解消。一方で、GMは昨年9月に韓国の現代自動車と戦略分野での提携の検討を開始した。

ホンダ周辺では「三部さんはとにかく(4輪事業の)スケールにこだわっている。別の道を探すのでは」との声が上がる。

両社はEV(電気自動車)や電池、ソフトウェアでの協業については、継続するかどうか現在も協議しているとみられる。だが、感情的な反発が残ることを考えると、仕切り直してどこまで連携できるかは不透明だ。

「最も理想的な組み合わせ」(経済産業省幹部)だったはずの統合は幻のように消えようとしている。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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