貧困国で頻発「少年の年齢詐称」億をせしめる手際 14歳の少年が19歳と判明…大胆な嘘をつく背景

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しかし、多くの選手が金銭的に恵まれていないドミニカ共和国国内において、簡単に年齢詐称やドーピングを簡単に、そして自発的に行えるのだろうか。いや、できるわけがない。メジャー球団をそこまで簡単に欺くことはできないし、ドーピングの薬品も簡単に手に入れられるはずがない。

ドーピングのノウハウも兼ね備えるアカデミー

つまり、上記の問題は、アカデミーが主導となって行われたものだと考えられる。もちろん、多くのアカデミーは真っ当に運営されているはずだが、市場価値を誤認させて高い契約金を勝ち取るために、すべてを尽くすアカデミーも、確かに存在しているのだ。彼らは選手を育成するのと同様に、年齢詐称やドーピングのノウハウも兼ね備えている。

筆者が関係者から聞いた話では、10歳頃からのドーピングを選手に強制させて、他のアカデミーに選手を移籍させる人身売買のような行為すら起きているという。

◾︎ 年齢詐称やドーピングが起こる理由

仮に年齢詐称が発覚した場合は、MLB側がその選手の契約資格を1年間の停止とする場合が多い。しかし、1年間の停止であれば契約の可能性が低い選手は年齢詐称するだけ得な気がした。

例えば、上記のパドレスの選手は19歳であったため、14歳と偽らなければ契約が取れなかった可能性すらある。

年齢詐称やドーピングをしなければ契約が取れないのであれば、せざるを得ない環境がそこにはあった。契約金を稼ぐことは、アカデミーだけでなく選手も大金を手にすることで両者にとってWin - Winであり、途上国であるドミニカ共和国において唯一の勝ち筋なのだ。

私はドミニカ共和国に滞在していたからこそ、彼らがどんな想いで悪事に手を染めるのか少しだけ想像することができる。

ただ、果たしてそこにはドーピングをしてまで命を掛けるほどの価値があるのだろうか。仮にマイナー契約を勝ち取ったとしても、メジャーリーグの舞台に立てるのはひと握りである。仮にメジャーリーグの舞台に立てたとしてもどうだろう。まだ彼らの人生はずっと続いていくのだ。

私も野球をしていた時に、野球が人生のすべてと考えてしまうことも少なくなかった。しかし、野球は人生のすべてではない。私はドミニカ共和国で野球にすべてを懸けた青年が幅広い世界に羽ばたいて、また別の何かに熱中できることを心の底から祈っている。

ドミニカ
青い空のもと、練習に精を出すドミニカの少年たち。しかし、背後にはシビアな現実がある(筆者撮影)
赤川 琉偉 ライター・ナックルボーラー

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あかがわ るい / Rui Akagawa

ナックルボールを武器にアメリカの独立リーグでプロ野球選手としてプレー。アメリカ、メキシコ、ドミニカ共和国、オーストラリアの海外4カ国の野球を経験。レッドソックスのメジャーリーガーに認められたナックルボールは、総再生回数400万回超えを記録。東京都世田谷区深沢出身。2000年生まれ。

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