中居問題がフジを揺るがす騒動に発展した理由 "コタツ記事"の普遍化がもたらした日本の暴走

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人々の情報取得量がマスメディアからネットコミュニティへ移る中で、ネットコミュニティにおける“ネット世論”は一気に固まっていった。

もちろん、あらためて言うまでもないように、確実な情報は極めて限られている中で、それらは何の確証もない噂でしかない。このような状況で“ネットリンチ”が行われた例は過去に数多くある。

スマイリーキクチさんや、故・西田敏行さんのネットにおける風評被害と似た状況だったといえば理解しやすいだろうか。今回の例と共通するのは、エコーチェンバー効果に加え、“弱者救済”という正義に向けて、不確定な情報を基に正しい行動として告発を続ける行きすぎた正義感もある。

一方で毎日の業務に忙しいフジテレビ幹部たちが、ネットコミュニティでのエコーチェンバー効果に晒されていたとは考えにくく、その周囲もSNSにどっぷり浸かっていたとは思えない。

推測でしかないが、フジテレビ幹部は「A氏の関与はあり得ない」「X子さん本人の希望により少人数での情報共有にとどめ、プライバシーに配慮した」と、ある面で当事者として確実な情報を持ち、第三者ではあるものの中居氏とX子さんのトラブルも把握、和解をしている中で(トラブルそのものに対しては第三者である)、週刊誌報道に対するフジテレビとしての立場を説明しようとした。

これが最初のフジテレビ・港社長の記者会見だった。

この会見内容が伝えられると、すぐに確証バイアスとエコーチェンバー効果で“フジテレビの罪は明らかだ”と考える人たちが、一斉に非難し始めたのは当然の成り行きと言えるだろう。

フジテレビの現状認識や問題意識、ネット世論を形成する歪んだ事実認定の乖離は大きく、巨大メディア企業が“女性個人”や“個人事務所所属のタレント”を押しつぶし、何かをもみ消しているかのように映ったに違いない。

もし、フジテレビがネットコミュニティから見えている景色を少しでも理解できていれば、記者会見の結果は大きく違っていただろう。

和解内容は守秘義務であり、それまでの社内調査や聞き取りもすべてを公開できるわけではない。そこには“外部からは見えない正当性”があったはずだ。法的なリスクを優先して「説明不能な沈黙」を選んだ結果、「隠蔽の確信犯」と誤解されるリスクを軽視してしまった。

一次情報源を持たない記事が“当たり前”の怖さ

ジャンルは違えど、筆者もジャーナリストの端くれである。

一般論だが、SNSでの噂話、個人的な発言と記者として書く記事の違いは、情報をどのように入手し、その情報の質、確度などを吟味し、誤解を与えないよう伝えることだと思う(もちろん、ほかにも配慮するべきことはたくさんある)。

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