中居問題がフジを揺るがす騒動に発展した理由 "コタツ記事"の普遍化がもたらした日本の暴走

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

近年、“コタツ記事”という言葉が一般に定着してきた。この言葉は、僭越ながら筆者がネット上で入手できる情報だけを集め、一次情報へのアクセスが可能にもかかわらず、自分の書きたいストーリーに情報をパズルのピースのように集めて構成する記事として使い始めたのが始まりだった。

普遍化するコタツ記事

必ずしもマイナスのイメージで語っていたわけではなく、いわゆる“文献派”執筆者のネット進化版のようなものを表現していたのだが、その後、スポーツ紙などがテレビでの著名人の発言を切り取って発信したり、SNSで切り取り発言を放流したのちに生まれたエコーチェンバー効果による流言飛語を“ネット世論では”と再発信するなど、コタツ記事の位置付けは否定的な意味合いへと大きく変化した。

この間、コタツ記事に関する取材を受けることも幾度となくあったが、近年は情報を受け取る側もコタツ記事に慣れきってしまい、一次情報源を持たない報道を当たり前のものとして受け取るようになってきた。

いわば“コタツ記事の普遍化”である。

今回の一連の問題についても、個人間でのトラブルとして解決済みの案件で守秘義務が発生している以上、一時情報源を持たない記者の意見はすべて“コタツ”だ。ニ度目のフジテレビ会見でも、多くの記者が“文春の報道によると”と責め立てていたが、彼らは何も情報源など持っていないのだ(しかも基になった文春報道は重要事実の訂正を直前に行っていた)。

今回のような騒動で、フジテレビのように記者会見を行う側も、それを伝える記者の側も、情報の非対称性と情報源の確実性に関して、もっと真剣に考えるべきだろう。

“ネット民は恐ろしい”などと言っていては問題は解決しない。エコーチェンバー効果によるコミュニティ特性などは研究が進んでいる。SNSでのネット世論はコントロールできるものではない。自らが手の届く範囲で、情報の品質について見直すべきだろう。

また、情報を受け取る側も、ネットコミュニティの長所を享受しつつ、そこには弱点、欠点が存在することを意識すべきだ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事