5%成長は本当?中国経済「失速」の知られざる実態 貿易黒字は過去最大でも「産業空洞化」の懸念

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さらに問題なのは、中国の場合、急速に産業空洞化する可能性があることです。中国は日本に比べて経済のサービス産業化が遅れているため、製造業が国外に出て行っても、サービス産業が吸収しきれない。社会保障がそれほど充実していない中国においてそれが起きると、大きな社会不安につながっていく可能性があるというわけです。

財政出動しただけでは「根本的な解決」にはならない

――社会不安に陥らないために、中国政府は何をすべきでしょうか。

強すぎる供給サイドをきちんと吸収できるような需要の拡大、需要を強くするような政策をもっと強く打ち出すべきです。中国政府もその点は認識していて、2024年の秋ぐらいから若干方針が変わってきています。9月にまとまったパッケージの金融政策を打ち出しました。

また時期や規模は具体的に明示されていませんが、中国財政部(日本の財務省に相当)の部長が「国債や地方の特別債の枠を増やして、さまざまな財政政策を行う」とさかんに発言するようになっています。

ただし、財政出動したからといって、今までのように供給サイドを強くしたり、地方に無駄なインフラを造ったりするだけでは根本的な解決にはなりません。

例えば、政府がマンションの空き部屋を買い取って、低所得者向けのマンションとして提供していく。財源がかなり必要になってきますが、そういったところにどれぐらい予算をつけられるかが焦点になってくると思います。

それに加えて、社会保障の枠組みを根本的につくり直すことも必要です。実は、胡錦濤政権時代に国民皆保険のような制度が整備されて、習近平政権でも若干改革が行われました。しかし、大部分の人々が、非常に不十分な社会保障や年金しか受け取れない状況は変わっていないので、こういったところにどう対応していくのか、少なくとも取り組む姿勢は見せるべきではないでしょうか。

動画内ではこのほかにも、不動産の値上がりを支えた「合理的バブル」の仕組みなどについて聞いています。
西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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