5%成長は本当?中国経済「失速」の知られざる実態 貿易黒字は過去最大でも「産業空洞化」の懸念

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不動産の問題については、これまでは経済成長率を上回るようなスピードで価格が上がっていたため、それを前提に経済が回ってきたという側面があります。それが今、ものすごく下がっているかというとそうではないのですが、少なくとも今までのようなペースで上がっていくことはもうないんじゃないかと人々が思い始めた。

そうすると、「不動産価格は上がっていく」という期待で成り立っていた経済が崩れる。例えば、不動産を買って、それを貸したり売ったりすることで老後の資金にするという人生設計がガラガラと崩れてしまうというわけです。結果として、しょうがないので消費を手控えるという現象が中国全体で起きているのだと思います。

輸出攻勢を続ける習近平政権が抱えるジレンマ

――中国政府は消費を喚起するために財政出動する姿勢をあまり見せません。なぜなのでしょうか。

これまでの中国の成功体験として、財政赤字を一定程度に抑えつつ、供給サイドを非常に重視してきました。EVをはじめとした世界の最先端産業において「製造強国」になる目標を掲げ、ある程度成功してきた。

供給力を上げて生産性を伸ばしていくことが至上命題であるという縛りがあるために、お金をばらまいて需要を支えましょうというマインドにならないのではないかと考えています。

――国内の消費が振るわない中で供給能力を強くすると、それを海外に向けざるをえないという話になります。実際、2024年に中国の貿易黒字が過去最大になりました。海外、とくにアメリカとの摩擦が懸念されますが、中国が輸出攻勢を続ける狙いは何でしょうか。

習近平政権においては、供給力を強くすること、先進的な技術を持った企業を生み出すことが大きな目的です。

今のところはBYDのように急成長している企業や太陽光パネルなどの新興産業で有力な企業が先進国に積極的に輸出する、あるいは海外に工場を建設してそこで現地生産をしていくといった海外展開を積極的に支援しています。

ただそれが大々的に進むと、貿易摩擦を引き起こしてしまう。実際、EVなどに関して、アメリカやEUは高い関税をかけています。それに対応するために、東南アジアやラテンアメリカなどの新興国に工場を建設して、そこから欧米に輸出していく動きが、ますます加速していく可能性があります。

そうなってくると、供給能力は今後も強くなっていきますが、国内の雇用や一般の人々の消費はますます伸び悩んでしまうのではないかというジレンマを抱えてしまいます。加えて、かつて日本が経験したような産業空洞化が起きる可能性があります。

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