多くの優秀なビジネスパーソンと日々接していて強く感じるのは、最近の「キャリア自律」の強さです。
もちろん個人差はあるものの、「会社に自分を育ててもらおう」という発想よりも、「さまざまな職場でキャリアアップを重ね、そのなかで自身として成長しよう」という発想を、優秀な人ほど強く持っています。
自らが持つノウハウやスキルは「会社のもの」というより「自らのもの」で、キャリアは自ら設計して、「所属する会社・職場で能力を培いたい」という「キャリア自律志向」が強いのです。
そういう人材だからこそ「前例主義」にとらわれず、さまざまな危機に対応できるという言い方もできます。
だからこそ、企業としては、自社で働く人を「主役」と考えて、
企業は課題を提示し、課題を克服するためのストーリーをアピールして「わが社に来てください!」というモードにならざるを得ない。
そんなときに、人材の能力すべては「会社のもの」です、というスタンスの会社に人が集まるはずがありません。
従業員の「こうありたい」を尊重する経営に
「人的資本は個人の持ちものである」という考え方は、「従業員個人が主役・主導」という経営のあり方にも必然的に結びつきます。
つまり、企業側から人材に「こうなってほしい」と命令するだけでなく、従業員の「こうありたい」という自律した意思を尊重しながら人材を見る必要が出てくるということです。
これが人的資本経営にとって肝となる、人材を「借りもの」として大切にする考え方で、現代に求められている経営であり、「キャリア自律志向」を持つビジネスパーソンに合致した思想だと私は考えています。
この思想のもとでは、「会社側が優位である」という認識は改めなければなりません。そうではなく、むしろ「会社と個人は対等になった」と捉えるべきです。
それが、お互いにとってウィンウィンな状況をつくる土台となります。
能力などの人的資本は、あくまでも従業員個人から「借りるもの」と考える企業にこそ、優秀な人は集まるのです。
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