自分より「推し」の成功を望む若者たちのリアル 「世界一幸せな衰退国」日本の歪んだ幸福感

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

筆者は、日本社会は世界の中で、経済的には、徐々に衰退していくと見ている。社会は分断され、大きな経済的発展はなく、少しずつ生活水準が低下する。この「少しずつ」というのがポイントだと思っている。

少子高齢化によって、現役世代が減少し、年金を受給する高齢者が増えていく。財政状況は徐々に悪化する。それ以上に、介護人材が大きく不足する。外国人に頼ろうとしても、日本の経済力が落ちているため、移民が来るどころか、チャンスを求めて海外に脱出する優秀な若者が増える。

経済成長は可能であっても、世界の成長率に比べれば、相対的に小さいままであろう。つまり、1人当たりGDPは、現在の先進国やアジアの新興国に遠く及ばないだけでなく、中進国にも追いつかれているかもしれない。

優秀な官僚による経済・社会運営

日本の政府、官僚はとても優秀で、「大きな経済危機」、つまり、一度に多くの人が生活できなくなるという事態は防がれると見ている。全体が破綻しないように、大きな不満が出ないように、経済・社会は運営されていくであろう。

例えば、高齢者を例にとろう。年金水準を「少しずつ」引き下げる。新たに年金をもらう人は、比較のしようがないからそれを甘受するしかない。10年前にもらい始めた人に比べて相対的に少ない年金であっても、それを実感することはないだろう。だから、文句はあまり出ない。

公的な介護水準も「少しずつ」引き下げられる。例えば、同じ介護基準の人でも、以前は週2回入浴サービスを受けられていたのが、月に2回になるというレベルである。これも、新たに要介護者になる人にとっては、前と比較しようがないから、文句は出にくい。

日本人は、同じ立場の人の間で差が付くのは嫌がるし、今介護を受けている人が、突然その水準が低下すると怒り出すかもしれないが、前の世代と比較して水準が低下していてもあまり気に留めないものである。

なぜなら、年金水準や介護水準の低下は、現実に今でも起きていることだが、ほとんど目に見えない形で実施されるからである。また、比較的富裕な層は、公的な部分に頼らない形で老後の資金、介護計画を立てるので、大きな反対運動は起きないのである。

次ページ現役世代も少しずつ貧しくなっていく
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事