自分より「推し」の成功を望む若者たちのリアル 「世界一幸せな衰退国」日本の歪んだ幸福感

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しかし、この「格差が努力で乗り越えられる」という物語は、ますます現実味を失っている。昭和の時代なら、「私も頑張ろう」になったかもしれないが、令和の時代には「別世界の出来事」として聞こえてしまう。

例えば、野球界で大谷翔平がアメリカで活躍している。若い人々の間でも大人気である。昭和の時代なら、自分も自分なりの世界で努力して活躍できるようになろうと「希望の星」という位置づけになっただろう。しかし、今の若者は、自分が身近な世界でもリアルに成功しそうもないことはわかっているから、彼を「推し」、つまり、応援する対象としてしまうのだ。

そう、現実の世界での成功が別世界の出来事なら、バーチャル世界の出来事、体験のほうがますますリアルに思えてくる、というわけである。

分断と絶望の令和社会

令和期は、このまま、「リアルな世界で『豊かな家族生活』を築くという希望をなんとか実現できる人たち」と、それが無理なので、「バーチャルな世界に希望を求める人たち」への分裂が進行していく。

一方で、リアルな生活で希望を持てず、さらに、バーチャルな世界にも行けない人が存在する。つまり、希望の持てる仕事に就いているわけでもなく、生活が豊かになる見通しもない。自分を大切に思う家族もいなければ、理想的な結婚ができる見通しもない。

そのように現世に絶望した人の中から、欧米のように、原理主義的新興宗教に走る人もでてくる。平成にもオウム真理教事件があったし、近年では統一教会が話題になっているが、現世の財産をすべてなげうって来世に希望を託す人もいる。

また、秋葉原事件などにみられるように、現世に見切りをつけ、「不特定多数」の人を道連れに、「死刑になってもかまわない」と言って罪を犯す人もいる。

ただ、欧米に比べれば、その規模は小さいのが日本の特徴で、バーチャルな世界がリアルな世界で希望を失った人たちの受け皿になっていることが大きいと私は見ている。

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