「一揆」と「SNS」歴史作家が語る驚きの"共通原理" 意図的に自分の名前を広めようとした首謀者も

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しかし足軽というのは、権力の手先として悪さをしているということで、マイナスイメージです。

だから土一揆と足軽は、別個に扱われてきた部分があります。だんだん研究が進み、土一揆に参加している人たちと足軽になっている人たちは、実は根っこでつながっているのではないかと、最近では考えられています。

マフィアと警察が「裏取引」をするようなもの

『室町アンダーワールド』(宝島社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

そのつながりを象徴する形で、土一揆の大将である蓮田兵衛と、応仁の乱で足軽大将として活躍する骨皮道賢が知り合いだったとする設定は、すごくうまいと思いました。

垣根 『室町無頼』では、蓮田兵衛が土一揆を起こす前に取り締まる側の骨皮道賢に裏取引を持ちかけます。

アメリカで言う、マフィアと警察が裏取引をするようなものです。蓮田兵衛は一揆をスムーズに進めるため、取り締まりの現場を任されていた骨皮道賢にお目こぼしを依頼し、その見返りとして道賢の面子を潰さず、花を持たせようとしていた、という感じでしょうか。

呉座 現代と同じですね。

垣根 そうすることで、骨皮道賢も幕府や侍所に対して点数を稼ぐこともできる。犯罪を取り締まりながら、実は犯罪者とも通じているという意味では、江戸時代の目明かしのようなものです。

呉座 個々のエピソードは創作だとしても、ストーリーの根っこにある社会観のようなもの、当時の室町社会はこのような感じだったという時代感覚は、今の歴史学の研究と合致します。時代の本質を突いているのではないかと思います。

垣根 涼介 作家

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かきね りょうすけ / Ryosuke Kakine

作家。1966年生まれ。筑波大学卒業。サラリーマン経験を経て作家に。『御前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。『ワイルド・ソウル』で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞し、史上初の三冠受賞。『君たちに明日はない』で山本周五郎賞を受賞。『極楽征夷大将軍』で直木賞を受賞。主な歴史小説の著書に『光秀の定理』『室町無頼』『信長の原理』などがある。

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呉座 勇一 歴史学者、信州大学特任助教

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ござ ゆういち / Yuichi Goza

1980年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は日本中世史。『戦争の日本中世史』(新潮選書)で第12回角川財団学芸賞受賞。『応仁の乱』(中公新書)はベストセラーとなった。『陰謀の日本中世史』(角川新書)で新書大賞2019第3位受賞。他書に『頼朝と義時』(講談社現代新書)、『日本中世への招待』(朝日新書)、『一揆の原理』(ちくま学芸文庫)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版)がある。

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