稽古をはじめとする日本の伝統文化には、心身を整える深い知恵が隠されています。茶道や神社参拝といった日常的な習慣の中に、実は科学的にも裏付けられた健康効果が存在しているのです。
自律神経のバランスが整う仕組み
「整う」という言葉にはさまざまな解釈がありますが、ここでは落ち着いた身体状態になることを指すこととします。
具体的には、自律神経のバランスが実現されることを意味します。
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人の自律神経のバランスがとれている時は、体内では以下のようなことが起こっています。
まず、ストレスホルモンであるコルチゾールの過剰な分泌が抑えられることで、血流が改善され、副交感神経が優位になります。それにより身体が鎮静状態に入るのです。
リラックスした状態が続くと、「幸せホルモン」として知られるセロトニンやオキシトシンの分泌が促進されます。
セロトニンは前頭前野を活性化させ、海馬や扁桃体の過剰な活動を抑制し、ドーパミンやノルアドレナリンのバランスを整えていきます。その結果、俯瞰的に考えたり、感情をコントロールしたりしやすくなります。
一方、オキシトシンはセロトニンの分泌を促進し、抗ストレス作用をもたらし、自律神経をさらにバランスよく整えます。
この状態になっているかを確認するには、目の前で起こる出来事や、自動的に引き起こされる感情に振り回される度合いが減っているかどうかを観察することが有効です。
人間の身体機能の基本的な特性のひとつは、自律神経に加えて、ホルモンと免疫の系統が一体となったシステムで、ホメオスタシス(恒常性維持機能)を保っていることです。つまり、これらのうちどれかひとつが崩れると、ほかの2つも必ず影響を受けるようになっています。
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