絶滅危惧船「ホーバークラフト」大分で復活の理由 定期運航は世界で1カ所のみの"爆音"珍乗り物
例えば、1988年に廃止された宇高航路(宇野港~高松港)は通常便が1時間、ホーバークラフト「とびうお」はたったの23分。ただし「とびうお」に乗船するには、500円の通常料金+1100円の「宇高ホーバー券」を別途で支払うという、3倍以上の料金を徴取していた(1987年3月 時刻表より)。しかし、途中で通常便を追い抜いて1本早い接続列車に乗れたこともあり、利用者はそれなりに多かったという。
「未来の旅客船」の多すぎた弱点
1970年代には子供向けの科学雑誌で、ホーバークラフトが「夢の超・高速船」「未来の船」として頻繁に登場し、誰もがこの先の普及を疑わなかった。しかし実際には、鳴り物入りで導入されたにもかかわらず、世界中の就航地から姿を消していく。理由はさまざまだ。
まず、ホーバークラフトは海面から浮いて進むため、海水の支え(浮力)があるフェリーと比べて重力がかかり、船体を大きくできない(物理でいう「2乗3乗の法則」に基づく)。
今回採用されたホーバークラフトくらいの規模だと、運べる乗客はフェリーに比べて半分~1/3程度(50~150人、今回の船体は定員80人)にとどまり、船会社にとって実入りが良いマイカー・トラック・貨物も積めない。そのうえに、ファンやプロペラを回す燃費が桁外れにかかり、空気を溜めるゴムのスカートも定期的に交換が必要となる。ホーバークラフトは「収入を得づらい、コストはかかる」状態であり、無理な値上げで客離れを起こす航路も少なくなかった。
また、浮上して進むために強風・横風に弱く、大分でも欠航が年20日程度は生じていたという。陸地で並行する国道213号も霧や風による通行規制に悩まされていたが、ホーバークラフトも同様に休航していては、クルマやバスから顧客を奪えるわけがない。
さらに、巨大なファンやプロペラ、エンジンの動作で金属音のような爆音があり、各地ともしばしば騒音問題に発展していたという(余談だが、筆者はホーバークラフトが就航していた香川県高松市の出身で、「港から1km先の学校の4階室内でも普通に聞こえる爆音」や、近隣の学校から「授業が止まる!」と苦情が出ていたような状況を、身をもって体験している)。
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