誰でも「Webライター」になれる時代に生き残る術 人を惹きつける文章を書くために必要なこととは
難病の子はあくまでも一例ですが、空き缶の周りを見てみれば、鉄棒があったり、カラスがいたり、いろんな選択肢があるわけです。何かを描写する際にそのものを見るだけでなく、一歩引いた視点や違う視点から見て描写できるかどうか、そういう発想ができるかどうか、そこは今までの自分の勉強や体験など、やってきたものを全部つぎ込んでやろうっていう意気込みがないと無理なわけです。常に全てをかけてやっていかないと人の心を動かす文章は書けません。
でも、それはすべての文化に対して言えることだと思うんですよね。音楽だって作り手の生き方をそのまま反映している。逆に言うと、仕事として切り分けてやるには難しいと思うんですよ。自分の生き方がそのまんま文章に出ます。
伝えるのは情報ではなく、人生のダイナミズム
――全く知らない分野の取材を始めるとき、石井さんは何から取り掛かりますか?
スタート地点でその分野を知らないことはメリットだと思います。だからこそ、一般人の目線に立ってどこが人の興味を引く部分なのか見抜けるので。知りすぎているとその業界の価値観に染まっているので、そのまま書くと一般人には読みにくい専門書や学術書に近いものになってしまうかもしれません。
ただし、全くの素人が始めるとしても、最後まで素人だったら全然面白くない、無知なだけになってしまうので、まずはその分野の本を読み漁ります。そこで得た知識はあくまでも参考というか、業界の全体像や歴史を知る意味合いです。
その後取材で実際に人に会いに行ったときに、面白いと感じる話が出てきます。取材で心を動かされたり、より興味を引かれたりした部分を補強するために、改めて業界をもう一回勉強し直します。
でも気を付けているのは、勉強したことは極力書かないことです。本から得た情報をそのまま引用しているだけでは解説めいたものになって、人生のダイナミズムみたいなものが見えにくくなってしまうのです。それは全然自分の声、文章ではないんですよ。
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