お金を出せば、幸せをいくらでも買い増せるといっても、限界効用の原則には縛られる。収入の増加によってどれぐらいの満足を感じるかは、収入の増加率におおむね比例するようだ。
つまり、収入が10%増えたときの満足度は、ホームレスであっても会社の役員であっても同じということだ。
ただし10%に相当する金額は、裕福な人のほうが貧しい人よりも当然大きくなる。したがって、過去数十年間に多くの国で進んだ格差の拡大は、人々の満足度には悪影響を及ぼしていたと考えられる。
社会保障制度による富の再分配や累進課税の強化が唱えられるのは、そもそもお金を持っていない人ほど、1ドルから得られる喜びが大きいということに重要な根拠がある。
拡大した国家間の所得格差
国家間の所得格差は国内の所得格差以上に大きい。西ヨーロッパの平均所得が現在1日109ドルであるのに対し、南米の平均所得は1日39ドル、アフリカの平均所得は1日10ドルだ。
平均的な米国人の1カ月の生産量は、平均的なナイジェリア人の1年間の生産量に匹敵する。
たいていは農村から都市への移住が進むことで生産性は高まるので、都市化が経済成長の推進力のひとつになるが、アフリカでは都市に住む人はいまだに約半分に留まっている。
原因のひとつは、土地の所有権が不明確なせいで、人々が住宅投資をしようとしないことや、政府が固定資産税収入をなかなか増やせないことにある。
不動産登記の制度を整えるというのは一見、平凡な取り組みだが、それが今後のアフリカの繁栄の土台になるだろう。
(翻訳:黒輪篤嗣)
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