あえての「棄権」や「白票」は不本意な政治家の黙認 「投票したい人がいない」とお嘆きのあなたへ

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でもそのピュアな気持ちにしたがって、迂闊な純粋精神を発揮してしまうと、もともと一番あり得ない投票先の政治家を自動的に応援してしまうという、最も不純なる行動(非行動)をしたことになります。

私たちは普段は日常生活の中で、適当に汚れちまった大人として、心に嘘をついて、偽りの言葉と態度で日々をやり過ごしています。責められる筋合いはありません。生き延びなければならないからです。だから、「最良の人を信念に基づいて応援し投票する」ということが成立しない条件にあったからって、突然ピュアなことをやらなくてもいいのです。

いつだって、善意もあるし、基本的にはまぁ正直に生きているからです。つまり普通の人間だということです。

鼻をつまんで投票する

それなのに、どうして政治に向かい合ったときだけ「似合わないピュア精神」を発揮してしまうのでしょうか? 言いたいことはたくさんあるし、大して好きでもない人だけど、「鼻をつまんで投票する」以外に、民意自動翻訳に吸収されるのを避ける道はないのです。

そんなのやっぱり絶対に嫌だと感じるみなさん。どうするかはもちろんあなたの自由です。でも政治と人間の非情なる関係とカラクリがある以上、そしてしつこいですが、世界を1ミリでもよくしたいと思うなら、いつも会社や地域でやっているように、「よりマシな決断」をされたらいかがでしょうか?

誤解なさらないでください。私は野党を応援しろと言っているわけではありません。

熱く純粋な人々の気持ちが、ムザムザ「白票だって意思のこもった表現だ」などというあからさまなフェイクによって、投票率が下がることでほくそ笑んでいる者たちに利用されていることに耐えられないので、こんなお節介なことを言っているのです。

岡田 憲治 政治学者/専修大学法学部教授

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おかだ けんじ / Kenji Okada

政治学者、専修大学法学部教授。1962年東京生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了(政治学博士)。専攻は現代デモクラシー論。本業・副業・地域支援・NPO運営・家事・育児の最中、とてつもないことが淡々と毎日起こっている21世紀を「一身にして二生を経る」心持ちで生きのびる。愛称オカケン。広島カープをこよなく愛する2児の父。著書に『教室を生きのびる政治学』(晶文社)、『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)、『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)、『言葉が足りないとサルになる』(亜紀書房)、共著に『転換期を生きるきみたちへ』(内田樹編、晶文社)など多数。

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