それではなぜ急いでいるのか。ひとつには、10月27日は参議院の補欠選挙(岩手)が予定されていて、これは与党議員の不祥事による辞任の後を受けたもの。与党は「不戦敗」となる見込みだが、新内閣が最初の選挙を落とすことはできれば避けたい。そこでこの日に総選挙をぶつける、というのは古来、自民党がよく使ってきた手法である(2017年にも使われている)。
「政治とは日程なり」
これだけだと「党利党略」ということになるが、やむを得ない政治日程上の理由もこれに加わる。
来月の11月5日にはアメリカ大統領選挙が予定されているが、そういう年は11月後半に大型の外交日程が組まれることが多い。今回もAPEC(アジア太平洋経済協力)とG20首脳会議が南米で予定されていて、石破首相が出席するためには、その前に特別国会を召集して首班指名をやらなければならないことになる。いやはや、いつも思うことながら「政治とは日程なり」なのである。
〇今後の主要政治日程
- 10月15日 衆議院選挙公示
- 10月27日 衆議院選挙・岩手参院補欠選挙
- 11月5日 アメリカ大統領選挙
- 11月上旬 特別国会召集
- 11月11~29日 COP29(アゼルバイジャン)
- 11月17~18日 APEC首脳会議(ペルー)
- 11月18~19日 G20首脳会議(ブラジル)
3年前は菅内閣から岸田内閣への切り替えであり、それは非常にうまく行った。菅さんは東京五輪を完遂し、新型コロナに対するワクチン接種を強力に推し進めるなど、いろいろ業績を残してくれた。しかし最後は不人気にあえぎ、政治資本を使い果たしたような形になって退陣となった。そこで自民党は総裁選を行って、岸田文雄氏への「看板の付け替え」で対応したのである。
それでは同じ手口は今年も通用するのか? 世論調査を見ると、どう見ても3年前に比べると自民党は分が悪そうだ。それはそうだろう。「政治とカネ」問題で国民は怒っていて、石破さんは土壇場で「裏金議員は非公認」という指示を出したが、それで落選する議員は少なからず出るだろう。自民党内には「石破支持派」と「高市支持派」との間の亀裂も入っていて、結果的に「比例票」が減ってしまう懸念も残る。
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