花王CM「夫が年上すぎて炎上」への強烈な違和感 「ハミング」のPR動画に批判が殺到は本当なのか

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視聴者から見て「なぜこの配役?」と思える広告も、いろいろな制約条件の中で、試行錯誤して決められていることが多いのだ。

花王ハミング
動画の中の妻。30代前半くらいの設定だろうか(画像:X「花王アタック(お洗濯全般)」公式アカウントにアップされた動画より)
花王ハミング
動画の中の夫。確かに年上には見えるが、そこまで年齢差があるだろうか(画像:X「花王アタック(お洗濯全般)」公式アカウントにアップされた動画より)

「リアリティー」より「受容性」が重要?

年齢差の話に戻そう。

広告の世界では、夫婦役の俳優の年齢差は、夫役のほうが妻役よりも年齢が高いことが多いことは事実だ。このこと自体を「偏っている」とする見方もあるかもしれないが、実態はどうだろう。

厚生労働省の調査に「初婚夫妻の年齢差別にみた婚姻件数・構成割合の年次推移」というデータがある。それに基づくと、初婚夫婦の年齢の違いは下図の通りだ。

初婚夫婦の年齢差
初婚夫婦の年齢差の比率(厚生労働省の2022年調査結果を基に筆者作成)

夫のほうが年上という夫婦は過半数を占めている。なお、夫のほうが7歳以上年上である比率は9.7%となっている。

数字から見ても、夫の年齢のほうが高い「年の差婚」は少数派とは言いがたい。一方で、夫婦の「年の差」は小さくなっている傾向がある。夫の年齢のほうが高い夫婦ばかり描いていると、「ステレオタイプ」と受け取られかねない時代が来ているとも言えるだろう。

広告に限らず、エンターテインメント全般に言えることだが、描かれている世界が現実に即したものとは限らない。むしろそうでないことのほうが多い(ただし、以前と比べるとリアリティーが重視されるようにはなっているが……)。現実から乖離していても、それが人びとから受容されているのであれば、実質的に容認されていると考えられる。

例えば、調味料のCMでは、キッコーマン「大豆麺シリーズ」の田中圭さん、味の素「クックドゥ」の阿部寛さん、藤原竜也さんなど、男性俳優が出演し、料理するシーンが映し出されている。一方で、主婦役の女優が料理をして、夫や子供に振る舞うシーンはほとんど見られなくなっている。

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