滑走路なき「新生スカイマーク」の前途多難 なお債権処理などに難題
スカイマーク案への賛成は議決者174人中135.5人、議決権総額の60.25%にのぼった(一部の債権者は議決権を分割して投票)。一方、イントレピッド案への賛成は37.5人、38.13%にとどまった。イントレピッドは議決権で37.91%を握る。エアバス<AIR.PA>、米リース会社CITなど3グループで計58.81%を占める大口債権者がスカイマーク案に投じたことになる。
スカイマークは、イントレピッドからのリース問題に加え、エアバスとの間でも、大型旅客機A380の購入中止をめぐる最大7億ドルの違約金問題を抱えている。エアバスは債権者集会でANA支援案に票を投じたが、その裏でANAがエアバスと密約を交わしたのではとの見方もある。集会後に会見したANAの長峯豊之取締役は、エアバスとは「交渉の中で(新しい機材発注を)契約するような話はしていない」と否定した。
今後スカイマーク株式の過半数を握る予定の投資ファンド、インテグラル代表の佐山展生氏はこれまでも、再建に必要な資金繰りは「この数カ月、あるいは一年、どこかに出してもらう必要がないよう準備を整える」と繰り返し強調してきた。だが、今後の資金繰りを懸念する債権者の声は少なくない。
会見に同席したスカイマークの井出隆司会長は5月、6月は搭乗率が増えてきており、「7月、8月は確実に黒字になった。9月も予算よりも上にいっている」と黒字基調にあることを強調した。しかし、こうした時期は盆休みなどの長期休暇があり、夏から秋にかけては旅行などで需要が旺盛な季節でもある。周辺からは「債権者とのゴタゴタが続いたり、冬になれば状況が変わる恐れもある」との声も出ている。
収益性強化と独立性が課題に
収益力の強化も課題だ。ANAの長峯氏は、具体的な契約の中でスカイマークの独立性が担保できる仕組みになっており、「運賃や路線、便数など航空事業に関する具体的な計画について、ANAは一切プロセスに関与しない」と強調した。だが、同氏は、スカイマークが収益性を維持するためには、需要期には高く、閑散期には安くといった運賃の弾力性をつけることが重要であることも繰り返し提案している。
井出会長は「規模の最適化を図り、これまで取りこんできたスカイマークのマーケット(顧客)を維持することで十分に利益は出る」と説明。「ANAやJAL(日本航空)と同じような運賃では、お客様は離れてしまう」と語り、値上げには慎重な姿勢を示した。
スカイマークは今後、ANAと共同運航を「なるべく早い段階で」(長峯氏)実施するなどして収益力を改善する。ただ、ANA色が強まれば、第3極としての立ち位置も揺らぎかねない。国内航空市場が寡占状態にある中で、スカイマークが独立性を貫けるのか。再建を主導するインテグラルの手腕にかかっている。
(白木真紀、志田義寧 編集:北松克朗)
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