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真面目な人ほど「就活」で損する演技社会の「茶番」 会社が求める演技をできる人が評価される現実

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  • 鳥羽 和久 教育者、作家
  • 舟津 昌平 経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師
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舟津:以前、金間大介先生が「今一番学生にウケる面接」という話を記事に書かれていました。例えばオンライン面接で、偉い部長がふざけたり、おやつを食べ出したりするんです。そこで、部下や後輩社員が突っ込むんですね。「そんなことしちゃダメでしょ」とか「何しているんですか、大人のくせに」ってたしなめる。そうすると就活生は安心するんですよ。「あ、偉い人が偉くないっぽさをちゃんと出している」と。

鳥羽:面白いですね。権力がある人が「権力なんて私、ないんですよ」っぽさをいかに演じるかが問われているんですね。

舟津:私の経験でもよくあるのは、学生や後輩がけっこういじろうとしてくるんですよね。勇気があるなと思う反面、自分がいじられるのはすごく嫌がる。たぶん脱権力されていないと不安だから、私にその「ぽさ」を求めているんだと思います。

「先生って言っても偉くないんでしょ」っていじってきて、それを受け入れるのを見せてほしいっていう、「ぽさ」の要求ですね。「脱権力されていないと不安」って、こっちがかえって不安になるような脆弱な感性ですけど、確実に浸透している感触はあります。

自分に合った演技でなければ苦しくなる

舟津 昌平(ふなつ しょうへい)/経営学者、東京大学大学院経済学研究科講師。1989年奈良県生まれ。2012年京都大学法学部卒業、14年京都大学大学院経営管理教育部修了、19年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)。23年10月より現職。著書に『制度複雑性のマネジメント』(白桃書房、2023年度日本ベンチャー学会清成忠男賞書籍部門受賞)、『組織変革論』(中央経済社)などがある。

舟津:今の話をもう少し膨らますと、我々は基本的に演技する存在だと思うんです。社会学者のゴフマンも「ドラマトゥルギー」という概念を用いて、役割を演じるという観点から社会を説明しています。その見立ては妥当だとしても、演技する役が自分に合っていないとストレスになりますし、無理なことを演技しろと言われてもできませんよね。

例えば現代の就活は、無茶な演技の要求に拍車がかかっていると感じます。拙著を読んでくれた先生から「しっかりした学生の一部に就活を嫌がる傾向がある」と聞きました。「ちゃんと」就活して会社に入ってもらわないと困るから頑張らせるけど、自分の頭で思考できていて芯のある学生ほど、演技の茶番に付き合えないというわけです。

鳥羽:そうですよね。演技性に開き直れない人たちは大変な思いをしているのをすごく感じます。ただ、会社側としては演技してくれたらいい、というのが本音かもしれませんし、むしろ演技ができる人間のほうが使いやすいという本音があるのでしょうね。

舟津:会社側は「こういう演技を求めているんだから、素直に演技してください」って思っていて、まさにその演技性に開き直れない若者が苦しむと。

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【ノリが社会全体にまで広がっている】

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