7月24日の地上波アナログ放送の終了に伴い、放送電波塔としての役割を終えた、名古屋市栄の名古屋テレビ塔が存亡の危機にさらされている。「名古屋の大切なシンボル。絶対に存続させる」(河村たかし市長)とはいうものの、存続へ向けた枠組みが定まらないままの状況が続いているのだ。
デジタル放送用の新テレビ塔建設が決まった時点で、テレビ塔の存続問題は浮上しており、さまざまな検討がなされていた。中でも、テレビ塔を運営する名古屋テレビ塔(愛知県・名古屋市がそれぞれ25%出資、残りを名古屋財界が出資)は35億円かけて改装し、テレビ局からの賃貸収入がなくなる分を他のテナントからの収入でカバーしていく構想をまとめている。
改装費用が35億円と巨額なのは、免震工事だけでも15億円ほど必要なため。これまでは建築基準法上の「工作物」だったが、放送用機器が置かれていたスペースに他のテナントを入れるとなれば、取り扱いが「建築物」となり、厳しい安全対策が求められる。改修費の一部を市が負担することが前提のプランだ。
この構想を市が認めればすんなり前進する。が、河村市長は「民間の人に買ってもらい金儲けをしてもらえばいい」と財政支出に難色。これが事態を複雑にしている。
名古屋テレビ塔の大澤和宏社長は「民間への売却ではなく、官民協力の仕組みである当社を存続させるほうがスムーズ。財政支出が難しければ、市が受け皿となり市民から幅広く寄付金を募るなど工夫の余地はある」と訴える。
名古屋市は今年度予算でテレビ塔活用調査、栄地区の魅力向上調査を実施中。「ビジネスの中心地が名古屋駅へ一極集中する中で、栄の役割をしっかり定めていく必要がある。現在進めている調査を基に、栄地区の再生とテレビ塔の活用を一体化した構想を作り上げ、市民の理解を得ていきたい」(市民経済局文化観光部の上田剛主幹)。
免震構造となったテレビ塔内に市の防災拠点も置いたうえで、さらに久屋大通公園を改造して、平常時はイベント会場、震災時は帰宅困難者の一時避難場所とする、という有力な案も浮上している。名古屋は地震への備えが遅れているだけに、こうした活用であれば市民の理解も得られるだろう。
(山田俊浩 =週刊東洋経済2011年9月3日号)

