奥田さんは震災当日のことを鮮明に覚えているという。
「普段はブランドものには興味ないのですが、その日は銀座にあるお店に夫と結婚指輪を見にきていたんです。そしたらズドンって音がして、窓ガラスが割れて……。指輪は買わずに、少し落ち着いたところで急いで帰宅したら、テレビで地元の石巻が大変なことになっていると知ったんです」
結婚指輪選びという幸せの最中での災害。しかも家族のいる地元が大きな被害に襲われている。もう気が気ではなかった。
「テレビの映像から目を離せなくなって、他のことが何も手につきませんでした。家族と連絡がついたのは3日後でした。すぐに地元に戻ろうって決めましたね」
夫が同郷だったこともあり、決断までの時間は早かった。
そして引き戻されるかのように原点の石巻に戻り、復興の現実と向き合う中で、再び自身で会社を立ち上げる準備を始めることになる。
学生時代とは違い、今度は準備期間に時間とお金も要することになった。
そして「カンボジア」で新会社を設立
「地元に戻って子どもが生まれて、子育てが始まりました。同時に復興の現状を見ながら、いろいろ思うことがあって。当たり前のことなんですけど、一生で何度も買わないような家や車ですら、モノってこんな一瞬でなくなってしまう、消えてしまうんだなって思って。悔いが残るくらいならやりたいことは今やろうと思って。それで思い切って海外に出てみようってなったんです。人生の中で他の国で暮らす時間があってもいいなって。ちょうど、子どもにも日本語以外に、英語と中国語を学んでほしかったので」
こうして、奥田さんの新会社は、海外に拠点を置くことになる。
学生時代、稼ぎながら飛び回っていたあの頃の気持ちが再燃し、今度は家族、子どもたちと一緒にカンボジアの地へと降り立つことになる。
*この記事の続き:「ツテなしコネなし海外起業」37歳女性の大胆人生
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