イーロンによるツイッター買収最大の罪とは フランシス・フクヤマ「未来は絶望か希望か」
情報の流れは、かつて特定のエリート層によって管理されていました。かつては、メディアや企業、もしくは政府が、政治に関するニュースや情報の選別や認証をする役割を担っていました。しかし、その役割は過去のものになりました。なぜなら、今は、誰でも好きなことを表現できるようになったからです。なので、以前のように、事実に関する情報に同じような信頼を置けなくなりました。
ワクチンの接種拒否を例にしましょう。20年前では、社会の縁以外では問題にすらならなかったでしょう。しかし現代では、共和党が「ワクチンは健康に悪い」と主張しています。馬鹿げた見解ですが、いまだにそう信じています。かつては大きな権威が、「何が大事な情報で、何がそうでないのか」を伝えてくれていました。そうした信頼性が失われた世界でのみ、こうした主張は可能になります。これが、問題の一つの側面です。
そして、2つ目の問題は、ソーシャルメディアの武器化です。ソーシャルメディアでは、特定のグループをターゲットにして、以前よりも洗練されたやり口で、人々が揺さぶりをかけられています。
また、巨大なソーシャルメディアプラットフォームに力が集中してしまっているのも問題です。イーロン・マスクがツイッターを買収してからのことを考えてみてください。ツイッターが左派的な方向に向かっていたのを、彼は気に入らなくて買収してしまいました。
一人の裕福な個人の影響で、ツイッターは突然右派的な方向に傾いて、陰謀論などをまき散らしています。これは、民主主義にとって大きな問題です。私的な力はこのように集中させるべきではないのです。
インパクトが不明な生成AI
さらに3つ目の問題は、生成AIについてです。「生成AIが究極的にどのようなインパクトをもたらすのか」。これについては、まだ誰も理解できていません。「仕事が奪われる」という懸念の声もありますが、しっかり理解するには時期尚早でしょう。
これらの技術は、平等を推進するかもしれません。たとえば、スキルや教育水準が低い人にとっては大きな力になるかもしれません。これについては、まだわからないことのほうが多いのです。
生成AIのインパクトについてはまだ不明ですが、一方で、理解できるテクノロジーもあります。それは、ブロックチェーンと暗号資産です。
ビットコインの登場から10年以上が経過しました。しかし現在では、誰も使っていませんね。これらは、お金にまつわる人類の金融の歴史において最大の詐欺の一つである、と私は思っています。
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