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「兵士の命優先」で解任されたウクライナ軍総司令官 侵攻から丸2年、ウクライナ大統領が思い知った現実

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  • 吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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2024年2月9日、ウクライナのゼレンスキー大統領(左)が、解任したウクライナ軍のザルジニー司令官に勲章を授与している(ABACA/共同通信イメージズ)

ロシアによるウクライナ侵攻から満2年を間近に控えた2024年2月上旬、ゼレンスキー大統領が大きな決断を下した。ワレリー・ザルジニー・ウクライナ軍総司令官の解任だ。ここでは、この解任の背景だけでなく、今回の侵攻が持つ戦争史的な意味も考えてみた。

ザルジニー氏解任と、後任にオレクサンドル・シルスキー陸軍司令官を充てる今回の軍トップ人事は異例な形で発表された。この種の重要発表は昼間に行われるのが通例だが、キーウ時間の2月8日夕方に、人事に関する大統領令をゼレンスキー氏が公表したのだ。なぜか。

大統領との「不仲説」を否定

人事発表に当たり、ウクライナ政府が非常に気にしていたのは、ワシントンの反応だったからだ。解任自体は事前に報道もあり、予期されていた事ではある。しかし、発表時間はアメリカ東部時間では2月8日昼に当たる。

当局者がオフィスにいる時間帯に入念に準備した一連の声明文を出し、読んでもらうことで、総司令官解任というショッキングな展開への先行き不安感を払拭し、アメリカ政府や議会の理解を得たいとの思惑があった。

とくにアメリカ議会では、キーウにとって緊急に必要なウクライナへの支援を含む予算案の審議が共和党の反対で難航している最中であり、アメリカの軍事支援に反対する意見が増える事態を避けたいところだった。

さらに声明文には、ゼレンスキー政権のもう1つの狙いが込められていた。今回の解任について、国民に人気の高いザルジニー氏が将来の大統領選で政治的ライバルになることを恐れてゼレンスキー氏が排除した、との内外での一部観測を否定することだ。

こうした観測が出た背景には、ザルジニー氏への国民の期待感の高まりがある。2023年6月に始まった反攻作戦が不発に終わったものの、それでもザルジニー氏の人気は高まった。その理由の1つが西側流の軍事教育を身に付けた同氏の近代的作戦指揮だ。

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