ANAと中外製薬「DXとセキュリティの両立」は必然 「AIの活用」を大前提に経営戦略として対策を

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2030年に向けてヘルスケア領域のトップイノベーターになるという成長戦略を掲げる中外製薬は、デジタルを活用した革新的新薬の研究開発から薬を患者に届けるまで、バリューチェーンをクラウド基盤で効率的に管理するDXを推進している。

生成AIについては、2023年5月ごろから社内でChatGPTの評価を実施。知財・著作権侵害、個人情報・機密データの漏洩、偏ったアウトプットなど6つのリスクを特定したが、止めるのではなく、外してはいけないポイントをまとめたガイドラインを策定したうえで、8月から全社的に利用を始めた。

今は業務効率化のための活用に着手した段階だが、今後はインサイトの抽出・意思決定支援、社内に眠る知見のマイニングへ展開する予定。中外製薬の小原氏は「創薬や競争優位に直結する領域に生成AIを積極的に活用していきたい」と語る。

事業継続リスクと捉えて経営陣を巻き込む中外製薬

デジタルを活用した成長戦略に呼応してサイバーセキュリティについても先進企業になるというビジョンを策定した。薬の研究開発では、知的財産や、DNA情報などのデータは重大なリスクになる。

また、患者に高品質の薬を安定して届ける社会的責任を果たすには、生産や、取引先のサプライチェーンリスクにも留意しなければならない。

2022年には、数千の取引先の中から、「事業継続にとくに重要な」取引先70社をピックアップしてリスク評価を実施。2023年には製薬工場の生産が停止したという想定でサイバー攻撃に対する訓練も実施した。

「サイバーセキュリティは、対策する領域の幅が際限なく広いので、コアバリューの患者に対する影響が大きなリスクから優先的に対策をしている」と小原氏は語る。

経営陣には、事業継続リスクの1つとしてサイバーセキュリティの重要性を訴える。四半期に1回、セキュリティ問題に関する経営陣への報告を設け、同社へのサイバー攻撃件数や、社内外のセキュリティ事故の状況を伝えている。

小原氏は「訓練を実施しようという機運を高めるには、経営陣を含めた会社全体の当事者意識が必要になる。セキュリティ状況を経営陣とプロアクティブに共有することは当事者意識の醸成に大きな効果があり、セキュリティ訓練には社長も参加してもらった。同様の課題を抱える企業は取り組んでみてほしい」と語った。

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