ANAと中外製薬「DXとセキュリティの両立」は必然 「AIの活用」を大前提に経営戦略として対策を
DXは、そのための重要な手段だ。旅客系、運航系、コールセンターのデータを仮想データベースで統合し、出発地空港、機内、到着地空港がシームレスに連携して顧客にサービスを提供する体制を整備。ペイメントサービス、ECモールなどを組み合わせたアプリにも注力している。
ただし、それには顧客情報の保護が大前提だ。「航空運送は安全が絶対的使命だが、情報の安全も同格に考えている」とANAの和田氏は語る。
航空会社のシステム障害は、多くの乗客に影響する。システムを止めないセキュリティとして和田氏は「ウイルスとのいたちごっこはしない。人のミスも前提に、侵入を許さない徹底的な予防策を講じている」と言う。
ANAは「ノーと言わないセキュリティ」を標榜
AIについては、4カ国語対応のAIで空港内を案内する人型ロボット、エンジン整備の際に異常箇所を検出する画像認識AIを活用してきた。
ChatGPTをはじめLLM(大規模言語モデル)の生成AIについては、社内でクローズドな「ANA Blue LLM」を構築。
第1段階では、DX推進のドライバーとしてトレーニングを受けた変革リーダーを中心に約1000人に利用してもらい、活用方法を検討している。
利用者を増やしながら、事務作業の生産性向上、ビジネスプロセス改革へと段階的に活用をステップアップさせる計画だ。
「生成AIの活用が避けて通れない以上、どんなセキュリティ対策が必要かを考えたほうがいい」(和田氏)と、デジタル変革、総務、法務の各部門が集まって利用上の課題を議論。
データ改ざんや、不正データ混入を防ぐセキュリティ、虚偽情報やフェイクニュースといったリスクを踏まえ、AI利用のガバナンス・倫理規定を策定した。
和田氏は「DX推進は、セキュリティで『ノー』と言った瞬間に止まってしまう。『ノーと言わないセキュリティ』を標榜して、ソリューションを考えている」と語った。