集中力が続かない…それは空気が原因かも? 温度・湿度だけでない空気の可能性

拡大
縮小
空気の悪い会議室
オフィスでの大人数の会議や、学校や塾での授業の際、頭がボンヤリする、眠たくなるといった経験はないだろうか。実はこれ、身の回りの「空気」が影響しているのかもしれない。人は呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を排出している。多くの人が密閉された空間に集まると、時間の経過とともに二酸化炭素の濃度が上がり、集中力の低下を引き起こすのだ。逆に、空気の成分を意図的にコントロールすることで、「集中する」「リラックスする」「運動の効率を高める」「疲れを軽減する」といった状態をつくり出すことも可能だということは意外と知られていない。こうした「空気の可能性」に着目し、新しい価値にする最新の取り組みを紹介する。

空気の成分や状態が人にもたらす影響

空気は普段目に見えず、重さも感じないため、日常生活で意識することはないかもしれない。しかし、人は空気の影響を多分に受けながら生活している。空気中の水分が少ないと乾燥していると感じるし、空気中に熱が多ければ暑いと感じる。

皆さんは、こんな経験をしたことはないだろうか。「狭い会議室で大人数が集まってミーティングしていると、疲れてボーッとする」「低気圧になると頭痛がする」「切った果物や野菜が、時間の経過で変色していた」など……。これらは、空気中の成分や空気の状態によって起こる現象だ。空気中の要素が変わることで、人は何らかの影響を受けるのだ。

これまで、私たちの生活の中で“空気をコントロール”することは、温度と湿度を調整して快適な空間をつくることが中心だった。しかし、空調専業メーカーの「ダイキン」では、気圧や気流、二酸化炭素や酸素の量を調整することで「空気の新たな可能性」が見えてきているという。

空気コントロールの可能性を示す3つの事例

目に見えない空気の成分や要素をコントロールすることで、人が恩恵を受けられる具体例を3つ紹介する。いずれも私たちの生活に密接したトピックスだ。

  • 二酸化炭素や、温度、香りをコントロールすることで、集中力を上げる
二酸化炭素の濃度を下げて集中できるようにする

室内の二酸化炭素量を減らすことで、集中力が上がることはご存じだろうか。子どもが勉強に集中できると、知らないことがわかったり、問題が解けたりすることに喜びを感じ、学ぶことがさらに楽しくなるという好循環が生まれる。子どもの勉強部屋は、こまめな換気などできれいな空気を保つことを意識したい。

また、温度や香りも重要なファクターだ。室内の空気の状態を一定に保つよりも、メリハリのある「温度変化の刺激」があるほうが、脳が覚醒し集中力が保たれるという。 アロマによる香りの刺激も脳の活性化をサポートしてくれることがわかっている。

  • 酸素濃度をコントロールすることで運動効率を高め、健康維持につなげる
酸素濃度を低くして運動効率を上げるダイキンの技術

運動効率を高めるため、アスリートが高地トレーニングをすることは有名な話である。高地では空気中の酸素量が少ないため、身体に負荷がかかって酸素を取り込みにくくなり、血液中の酸素の量が低下してしまう。そうなると環境に適応し、赤血球の数やヘモグロビン濃度を増やすことで運動能力を向上させようとするのだ。

最近の研究では、酸素量の少ない空間で体を動かすことは、運動効率を高めるだけでなく、体力増強や生活習慣病の予防も期待できることが報告されている。空間の酸素濃度をコントロールすることで、健康的で豊かな生活を送れるようになるということだ。

ダイキンはこの原理を用いて、忙しいビジネスパーソンが仕事の合間に効率的に運動ができる「低酸素トレーニングルーム」を実用化し、都市部のオフィスに設置している。オフィス内に低酸素トレーニングルームがあることで、空いた時間や終業後に体力増強ができるだけでなく、ストレスの発散にもなりそうだ。

  • コンテナ内の空気をコントロールすることで野菜や果物を遠くまで運べる
コンテナで野菜を鮮度を保ったまま輸送

意外と知られていないかもしれないが、人と同様、収穫された野菜や果物も呼吸をしている。野菜や果物は、呼吸をすると熟成・老化が進み、鮮度が失われる。野菜や果物を運ぶコンテナ内の温度を下げ、外部の空気から窒素のみを抽出して取り込み、代わりに酸素を排出することで、野菜や果物の呼吸を抑えて遠くまで運ぶことができるというわけだ。

国内のどこのスーパーでも買えるようになったアボカドは、この技術を使って、メキシコから約2~3週間かけて新鮮な状態を保ったまま輸入されている。

日本における2020年度の食品ロス量は522万トン。収穫、輸送、貯蔵などの過程で廃棄される分は、このうち約275万トンと過半数を占める。これは輸送中に老化が進み、食品が傷んでしまうことも影響している。コンテナ内の空気をコントロールする技術は、世界中から届く食材を新鮮なままおいしく食べられるようにするだけでなく、食品ロス問題の解決にも貢献しているのだ。

※出典:消費者庁「食品ロス量(令和2年度推計値)の公表」について(2022年6月9日発表)

「空気の新たな可能性」に挑戦するダイキン

前述した3つの事例だけでなく、空調専業メーカーダイキンでは「空気の新たな可能性」に着目し、さまざまな研究と実用化に取り組んでいる。これまでの温度と湿度をコントロールし生活空間を快適にするという空調技術の枠を超え、空気の成分や要素をコントロールすることで私たちの活動や状態そのものをよりよくできるような、生活に役立つ「空気の新たな可能性」を追求しているのだ。

実際にダイキンでは、東京大学と1000人規模が行き来する連携を行うなど、研究開発のコア拠点であるTIC(テクノロジー・イノベーションセンター)の研究者・技術開発者が産学連携や企業との協創によって、「空気が持つ新たな可能性」を具体的な生活価値として社会に実装するために取り組んでいる。

これからの未来、空気がいったいどんな社会課題を解決し、私たちにどんな幸せを提供してくれるのか――。空気の可能性を信じて追求するダイキンは、これまでになかった空気を世界に、そして私たちに届けるため、新たな挑戦を続けている。

ダイキンが見つめる「空気の可能性」についてもっと知る

関連ページAD
お問い合わせ
ダイキン工業
連載ページはこちら