中国の太陽光大手が「米国工場」の建設競う事情 「インフレ抑制法」が輸出型ビジネスの転換迫る

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太陽電池モジュールの生産能力において、中国は全世界の約8割を占めている。中国メーカーは製品の半分以上を海外市場に輸出しており、なかでもアメリカは利益率が最も高い市場のひとつだ。天合光能の開示資料によれば、2022年のアメリカ市場での粗利率は16%。これに対し、中国市場の粗利率は13.5%、ヨーロッパ市場は12%にとどまる。

とはいえ、アメリカ市場でのビジネスは中国メーカーにとってリスクも伴う。アメリカのバイデン政権は2022年8月、再生可能エネルギーと気候変動対策の分野に巨額の補助金を支給し、関連産業にアメリカ国内への投資を促す「歳出・歳入法(インフレ抑制法)」を成立させた。

これを機に、アメリカの太陽光パネル業界では生産能力を拡大するための投資ラッシュが起きている。アメリカ太陽光パネル産業協会の予測によれば、アメリカの生産能力は2023年だけで前年の5割増しの32GW増加する見通しだ。

迂回輸出封じられ減損計上

しかし、中国メーカーがアメリカ市場の高い利益率、手厚い補助金、急拡大する需要を享受するためには、アメリカに工場を建設して現地生産する必要がある。換言すれば、アメリカ政府の保護貿易的な政策のおかげで、(中国からの輸出頼みでは)アメリカでの市場シェア獲得が困難になっているのだ。

中国からの輸出頼みでは、アメリカ市場へのアクセスが困難になっている。写真は隆基緑能科技の中国国内の工場(同社ウェブサイトより)

例えば隆基緑能科技は、8月30日に発表した半期決算で、2023年1〜6月期に棚卸資産評価損と契約履行コストの減損損失として17億5000万元(約353億円)を計上した。

本記事は「財新」の提供記事です

同社の説明によれば、この損失の主因は2022年末から2023年初めにかけて(第三国経由で)アメリカ向けに輸出した製品の通関が差し止められたことだ。これらの製品は海外の倉庫に滞留した後、やむなく中国に持ち帰り、国内市場での在庫処分を余儀なくされたという。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は9月13日

財新 Biz&Tech

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