チェルノブイリの経験を生かして悲劇を回避せよ--松本市長/医師・菅谷昭《下》
チェルノブイリで苦しんでいるような子どもたちが今後出てくる可能性があることを念頭に、事故に対応しなければいけない。
--チェルノブイリは特殊なケースで、福島第一原発事故などとは比較にならないとの指摘もあります。
私は、チェルノブイリで起きた事実に基づいて話している。だが、なぜがんが多発したのかは、繰り返しになるが、誰も科学的に証明できていない。
チェルノブイリ事故では甲状腺がんのみ、放射性物質が原因としてIAEAが認めた。それも、事故の規模が大きく大量の放射性物質が放出されたことや、汚染された牧草を食べた乳牛から取った牛乳を連日飲んだためとされている。また、ヨウ素が含まれた魚や海草類を食べる習慣がなかったため、甲状腺にあるべきヨウ素(ヨード)が少なく、大量の放射性ヨウ素が取り込まれやすかったためなどと、現地の状況を知らない研究者たちが述べている。
規模が違うとはいえ、福島第一原発3号機付近で1時間当たり400ミリシーベルトの放射線量を記録し、同県南相馬市や飯舘村など原発から20~40キロメートル圏内でも、通常よりはるかに多い放射線量が検出されている。私の経験上、チェルノブイリでは牛乳の他に野菜やキノコ、野イチゴなどから体内に入ったと見る。そうして甲状腺内に入った放射性ヨウ素は、飛程の短いベータ線を出して影響を及ぼしている。もちろん経気道的、経皮的経路による取り込みも存在した。
だから、外部被曝の基準で安全性を言うのではなく、医学・生理学的、細胞学的見地も考慮してどうだ、と言ってもらいたい。一方的な見地から「安全だ」などと言っても混乱を招くだけで、総合的に判断してきちんと国が言ってほしいと思う。やはり国家の非常事態だから、国が強力なリーダーシップを執るべきだ。国民の命を真剣に考えていないのではないか。
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