迷惑な傘の横持ち「なぜそう持つのか」聞いてみた 傘の先が目に当たったらどんなダメージがあるのか
では、もし傘の先が目に当たった場合、どんなダメージが想定されるのか。
前出の宇佐美医師によると、かつては先のとがった金属製の傘が数多く流通していたため、眼球に穴があく「眼球破裂」が度々報告されていたという。その後、安全意識の高まりによってプラスチック製の傘が主流になったことで、今は、破裂を引き起こすような事故は少ない。
感染症を引き起こす可能性も
しかし、プラスチック製ならではの恐ろしさもある。使い込むにつれて傘の先が削れてザラザラとけば立つため、目を軽くこすっただけで眼球表面に激しく傷をつけてしまう恐れがあるのだ。いわゆる黒目の部分である「角膜」が外傷により濁ってしまうと、視力が低下したまま元に戻らないケースも少なくない。
大量のばい菌がついた傘で目に傷がつくのだから、感染症を引き起こす可能性も十二分にある。重度の「感染性角膜炎」になれば、寝ている間もふくめ1時間に1回、目薬を差したり、毎日2回の点滴を打ったりと、入院治療が必要になる。完治までには数週間~数カ月かかることもあるという。
それでは、不幸にも自分の目に誰かの傘の先が当たってしまったら、どうすればよいのか。宇佐美医師は、「痛みが続く、視力が下がる、充血や涙が止まらないなどのサインがある場合は、角膜に傷がついている可能性が高いので、仕事を休んででも一刻も早く医師の診察を受けてください」と話す。
病院に行くまでの間は、これ以上感染症のリスクを高めないためにも、絶対に目を触らないこと。冷やすなどもまったく意味がないため、とにかく目に刺激を加えないことが一番の応急手当てだという。
数年前から、ずっと問題視され続けている傘の横持ち。当然、横持ちをする人が減れば世間の興味も薄れていくはずだが、実態はそうなっていない。
そろそろ、これをニュースとして取り上げなくてもいい日が来ることを、願うばかりだ。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)
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