佐藤二朗「アヒージョを最近知った僕が思うこと」 人は一概に「○○な人」と色分けできないな、と思った話
沢庵と父の威厳
「ものを知らない」。よく言われる。事実そうだと思うし、大人として恥ずべきことだと自覚している。「アヒージョ」という言葉は2年ほど前に知った。それまでの47年間、僕の人生にアヒージョはなかった。知ってからは3日に1回くらいアヒージョを食べている。食べ過ぎだ。でもめっさ旨いよねアヒージョ。
「カマドウマ」は数日前に知った。妻が「最近、わたし、腕が太くなっちゃって……カマドウマみたい」と言うので、「え何? 何ウマ?」と聞いたことにより知った。妻は呆れながら、昆虫の一種だと教えてくれた。
先日、晩酌中にふと、本当にふと思って、妻に聞いた。「沢庵ってさ、要するにさ、何なの?」。妻は「ちょっと」と小声で囁き、僕を別部屋に導いた。「父の威厳が失墜するから、息子の前で変な質問やめて」と怒られた。そりゃそうだ。沢庵は大根の漬け物だ。ちょっと考えれば分かる。いや考えなくても分かる。常識だ。
しかし、なんか俺、沢庵は沢庵だと思ってたんだよね。幼き頃より当たり前のように食卓にあった沢庵は他の何物でもなく要するに沢庵だと思ってたんだよね。いや勿論、沢庵は沢庵なんだが、沢庵が大根というところまで頭が回らなかったというか、要するに僕ちょっと馬鹿なんす。これマジで。
いや、開き直るのはよそう。無知は恥だ。恥ずべきことだとしっかり自覚し、しっかり恥じよう。そして無知を改めるよう努めます、ハイ。
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