「ロイホのパンケーキ酷評」シェフを批判は犯罪? 弁護士が解説「ネット上の酷評口コミの危険性」

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(1)公共の利害に関する事実にかかり、かつ、もっぱら公益を図る目的である
(2)意見・論評の前提となる事実が重要な部分について真実であることの証明がある
(3)真実であることの証明がないときでも、行為者において真実と信じたことに相当な理由がある
(4)人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない

まず「公共の利害に関する事実」(公共性)というのは、広く一般市民に知らしめることが必要・相当と考えられる事柄のことをいいます。

例えば、犯罪行為に関する事実などがこれにあたります(刑法230条の2では、「・・・公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」と規定されています)。

次に「もっぱら公益を図る目的」(公益性)というのは、広く一般市民に知らしめることを目的として意見・論評の表明を行なったかどうかということです。

公共性が認められる場合には、表現態様が著しく不当などの特段の事情がない限りは、公益を図る目的であったことが推認されます。

なお、「もっぱら」とありますが、裁判例には「主たる動機が公益を図ることにあればよく、多少私益を図る動機が併存していたとしても差し支えないというべきである」としたものがあります(東京地判令元年11月15日)。

それから、「意見・論評の前提となる事実が重要な部分について真実であることの証明があるか」(真実性)というのは、文字通り、意見・論評を表明する際に前提とした事実につき、その重要な部分が真実であると証明できるか、ということです。

ただし、(真実であるにもかかわらず)立証ができないために名誉毀損が成立するとなれば、表現の自由を過度に制約・萎縮させてしまう可能性があることに配慮し、証明がない場合でも、真実と信じたことに相当な理由(真実相当性)があればよい、としてハードルを下げている訳です。

そして、意見・論評の内容が、「人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない」と認められれば、違法性または責任が阻却され、名誉毀損にあたらないということになります。

具体的な例を示すことは難しいですが、例えば、グーグルマップ上に表示されているシェフのお店に、クチコミとして「クソ高い料金とってクソ不味いゲロ料理しか作れない五流オブ五流のクズシェフ」などと書き込んだ場合は、人身攻撃に及ぶものとして名誉毀損にあたると判断される可能性が高いといえるでしょう。

味と関係ないコメントを書いても良いのか

——店のレビュー欄に、味などとは関係ない批判コメントを書いても良いのでしょうか。

味などと関係のないコメントは、そもそも「公共の利害に関わる事実」と認められない可能性が高く、そうすると、そのコメントが「社会的評価を低下させるもの」にあたる場合は、名誉毀損が成立するということになるでしょう。

なお、社会的評価を低下させない場合でも、「社会通念上許容できる限度を超えて名誉感情を害する」表現については、侮辱として不法行為責任を負うことがあります(最判平22年4月23日民集64巻3号758頁)。

名誉感情というのは、「人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価」(最判昭45年12月18日民集24巻13号2151頁)をいいます。

どういった表現が社会通念上許容できる限度を超えて名誉感情を害するといえるかについて、具体的な判断基準を示している裁判例はあまり見当たらないのですが、過去の裁判例では以下のように判断したものがあります。

「表現態様が著しく下品ないし侮辱的、誹謗中傷的である等、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為は、人格権を侵害するものとして、名誉毀損とは別個に不法行為を構成する」としたもの(福岡地判令元年9月26日判時2444号44頁)、

「社会通念上許される限度を超える侮辱行為、すなわち、およそ誰であっても、そのような行為をされたならば到底容認することができないと感じる程度の著しい侵害行為であれば、人格権を侵害するものとして不法行為が成立する」としたもの(東京地判平27年11月16日)
プロフィール:櫻町 直樹(さくらまち なおき)弁護士内幸町国際総合法律事務所
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。

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