22年7月「ホスピス開業」した不動産会社の攻勢 「意外なほどに働きやすい」ユニークな人事戦略

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2022年7月にオープンした、霞ヶ関キャピタルが初めて開発したホスピス「パルム澄川ホスピス」の外観
不動産コンサルティングなどを展開する霞ヶ関キャピタルが新たな攻勢をかけようとしている。これまで物流施設やアパートメントホテルなど不動産投資商品の組成から運用、売却までを手がけ急成長。設立8年目の2018年に上場し、現在は東証グロースに名を連ねている。そんな同社が22年春から「ヘルスケア事業」に進出し、人材の補強、会社規模の拡大を狙っている。

人生の終末に「ホスピス」を選ぶ人が増える必然

不動産投資を中心に新たなマーケットを切り開いてきた霞ヶ関キャピタルが、22年春から新規事業としてヘルスケア事業に乗り出している。超高齢社会へ突入した日本ではヘルスケア関連施設の不足が大きな社会的課題となっており、新規施設の供給が求められている。

同社のヘルスケア事業ではこれまで蓄積したノウハウを基に、施設開発だけでなくホスピス住宅を中心とした有料老人ホームを開発し、高齢化社会における課題の解決に向けたサービスを展開していく。霞ヶ関キャピタル執行役員ヘルスケア事業本部長の古川喜久氏は次のように語る。

「ヘルスケア事業では、終末期医療に特化したホスピス住宅を中心に進出することで差別化を図ろうと考えています」

霞ヶ関キャピタル執行役員 ヘルスケア事業本部長 古川氏
執行役員 ヘルスケア事業本部長 
古川 喜久

すでに同社では22年7月、札幌市に住宅型有料老人ホーム「パルム澄川ホスピス」を開業した。

「ホスピス住宅は通常の介護施設と比べて医療的な要素が強いため、運営においても高い専門性が求められます。だからこそ、私たちが開発から運営まで、社内外の知見を集めた体制で取り組んでいくことが市場価値を生み出すと考えています」(古川氏)

>>霞ヶ関キャピタルで社会課題に取り組む

「投資から運営へ」一貫した事業展開へのもくろみ

近年のヘルスケア市場では、土地代や建設費の高騰を受け、投資会社と運営会社の間で交渉が長引きがちになっていた。合意形成が難しくなり、ホスピス向け住宅の供給が滞ることも少なくない。

そこで同社は不動産コンサルティングのプロ集団として、企画開発から運営、売却までを一貫して手がけ、投資に転換していく。それにより迅速な意思決定を可能にしている。

「ヘルスケア事業においては、終末期医療を担うホスピスを、あえて駅から近い立地で実現します。ホスピスは家族だけでなく、看護師や介護士にとっても立地がいいほど働きやすいからです。

収益の問題などから郊外が選ばれがちですが、私たちは土地取得から企画・開発といった投資ノウハウがあるので好立地に施設を用意することができます。

加えて、ハードとしての施設の開発だけでなく、そこに魂を入れることが私たちらしさになる。つまり『投資から運営へ』の新たなビジネスとしての価値を創出する狙いもあるんです」(古川氏)

同社が展開しようとしているホスピス住宅の標準的なモデルは1施設で約50部屋、看護師や介護士を合わせ50名程度の人員を想定。現在、複数の案件が動いており、今後2年で10施設、5年後には30施設を目指す。古川氏はこう述べる。

「私たちの経営理念である『その課題を、価値へ。』を基に、新たな仲間と一緒に、これまでにない高齢者向けサービスを構築し、日本の社会的課題の解決に貢献していきます。

ヘルスケア事業は立ち上げからまだ2年ですが、われわれは幅広い経歴を持つ人が得意領域を発揮し合うことで社会課題にメスを入れてきました。

社会課題を解決するために立ち上がるなら、同じ志を持つ多様なプロフェッショナルなメンバーと力を合わせる必要があるのではないでしょうか」

>>霞ヶ関キャピタルで働く

中途採用で求めるのは「変化を起こせる人材」であること

こうして次々と新規事業に参入し、成長を続ける霞ヶ関キャピタル。その成長力の源泉の1つが人事戦略だ。従業員数を2019年以降、増やし続けている。毎年50名前後採用し、来期も50名程度とペースを落とさず、人員を拡大する方針だ。その狙いについて同社管理本部人事戦略部長の田淵裕季子氏が話す。

「私たちはスピード感のあるビジネス展開を強みとしており、事業拡大に伴う先行投資として人員の補強をしてきました。また、情勢や経営方針に合わせて柔軟に組織変更や異動を行っています。そのため、その変化を楽しめる人材や経営者マインドを持った人材を積極的に採用しています」

同社の人材採用はキャリア採用が中心だ。不動産業界や金融業界を筆頭に、多種多様の業界経験者が活躍している。その3分の1がリファラル採用でもあるため、オフィス内は活気にあふれ、自然と相互協力する雰囲気がある。

年齢は30~40代が多く、20代でもパフォーマンス次第で管理職として活躍する社員もいる。給与水準が高いにもかかわらず、実際の平均残業時間は約15時間と少ない。時間や場所を制約せず、自主責任意識を持った働き方を推奨しているからだという。

「採用で重視しているのは、変化を楽しむことができるか、また、組織という枠組みの中でも経営者のマインドを持っているかということです。

管理本部 人事戦略部長 
田淵 裕季子

もし自分自身が経営者であれば情勢に合わせて変化するはずですし、何時間働くかよりもどんな成果を出すかのほうが重要ですよね。管理職に限らず、アシスタント職でも新しいことに積極的に挑戦し、質量ともに高いアウトプットを意識してほしい。

そのため、リモートワークやフルフレックス制度を導入し、効率的に業務のアウトプットができる就業環境にしています。会社に1日7時間いる必要はなく、半分の時間で仕事がこなせるならそれでいい、というスタンスです」(田淵氏)

同社の福利厚生も非常に手厚い。公私のメリハリをしっかりとつけ、仕事のときは集中する。集中した分だけ、ランチやプライベートの時間は会社の補助を利用して楽しんでほしいという。

そのほか、集中して業務ができるように入社時にイヤホンも支給しているという

「この会社では若手にも裁量が与えられるので、結果を出すために何をするのかは自分次第です。自分で考え、判断するからこそ力がつく。これはこれからのビジネスパーソンにとって最も必要なスキルだと思っています」と田淵氏は強調した。

今後も人事戦略部は、組織の拡大や強化のため、柔軟な制度設計や人材育成に注力していく予定だ。「今起きている社会課題」に向き合う、強い意思を持ったメンバーを募集している。

>霞ヶ関キャピタルで働く

霞ヶ関キャピタルのオフィス
霞が関を一望できるロケーションにあり、開放感のあるオフィス。古川氏と田淵氏の和気あいあいとした雰囲気が印象的だ