ホテルに物流...「異色」な不動産開発の舞台裏 唯一無二のビジネスモデルと「持続可能」で勝負

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ホテルに保育園、ショッピングセンターの再生事業、再生可能エネルギー開発と、異色の事業ポートフォリオを持つ企業がある。一見、脈絡のない多角化に見えるが、根底にあるのは「社会の課題を価値に変える」という揺るぎないミッションだ。その企業の名は、霞ヶ関キャピタル。次々に事業を仕掛ける同社の舞台裏に迫った。

テナントの賃料を下げ商業施設の再生に踏み出す

2018年に上場を果たした霞ヶ関キャピタルは、不動産ファンドをルーツに持つ。東日本大震災で被災したショッピングセンターの再生に携わったことを機に会社を設立。それ以降、再生可能エネルギー事業やホテル事業など幅広く事業展開をしながら成長を続けてきた。

特定分野にこだわらずに事業展開しているのには理由がある。同社には、ショッピングセンターの再生を手がける中で形づくられてきた価値観があった。それは、社会課題の解決が価値を生むということ。会社設立半年後にジョインした代表取締役の河本幸士郎氏は、当時の様子を次のように振り返る。

霞ヶ関キャピタル
代表取締役
河本 幸士郎氏

「ショッピングセンターを再生させたら、地域の方々が本当に喜んでくださいました。地元の新聞に取り上げていただいたり、町長から感謝の言葉をかけられたりしました。このとき感じたのは、社会課題に取り組めば多くの方に応援してもらえて、その応援が力になって強いチームができるということ。私たちは不動産ファンドがルーツですが、そのビジネスモデルにこだわらず、社会課題を解決することを事業にしようと決めました」(河本氏)

社会課題の解決をビジネスにする。その後、日本全国に再生可能エネルギー施設を22カ所造ったのは当然、エネルギー問題の解決のためであり、保育事業にも参入して保育士用社宅付きの認可保育園を開発したのは、慢性化している保育士不足を解決したいという思いからだった。

独自のビジネスモデルで全国の不動産を開発する

霞ヶ関キャピタルが手がける事業に共通しているのは、社会課題を解決したいという強い思いだけではない。同社は、自社を「戦略的コンサルティング型デベロッパー」「成果報酬志向型ファンドマネジャー」と定義して、一般的なデベロッパーとは異なるビジネスモデルを持つ。

一般的なデベロッパーは、まず開発用の土地をソーシング(調達)して、マンションやオフィスビルなど、その土地にふさわしい開発プランを練り、ゼネコンなどの開発主体をとりまとめてアサインする。ここまでは、霞ヶ関キャピタルも同じプロセスだが、異なるのは、その先である。執行役員 戦略投資事業本部長の岡田康嗣氏は、次のように解説する。

霞ヶ関キャピタル
執行役員
戦略投資事業本部長
岡田 康嗣氏

「一般的なデベロッパーは、プランニングした後に自社で資本を投下して開発をします。一方、私たちは自社で資金を拠出するのではなく、開発ファンドを組成して投資家や事業会社に投資をしていただきます。開発中はプロジェクトマネジャーとして案件に関わりますが、自らは開発主体にはなりません。開発資金を拠出せず、その土地に最適な企画をして開発案件としての付加価値を上げることに注力するという意味では、コンサルタントの動きに近いですね」

通常のデベロッパーは竣工後のタイミングで資本回収となるが、同社では開発に着手した時点が回収ポイントになるため、資本効率がよいのが特徴的だ。

「このビジネスモデルを成立させるには、ソーシング力、企画力、商品力などのあらゆる力が高いレベルで必要。ですから他社がまねしたくても簡単にはまねできない」と河本氏は胸を張る。

ソーシング力を例に取ろう。同社の高いソーシング力を支えているのは、地場の金融機関や業者との信頼関係だ。大手デベロッパーは地方都市にあまり興味を示さないが、地方創生を社会課題の1つとして捉えている同社は、積極的に地場のプレーヤーを巻き込んでリレーションを構築してきた。その実績が評価されて、最近は地方銀行から新たな案件を紹介してくれるケースが増えたという。

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