ホテルに物流...「異色」な不動産開発の舞台裏 唯一無二のビジネスモデルと「持続可能」で勝負

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新たに始める2つ目のテーマは、物流チェーン改革だ。近年のeコマースの伸びは目覚ましい。新型コロナウイルスで多くの業界が打撃を受けたが、eコマース企業はむしろ売り上げを伸ばしている。しかし、eコマースが拡大するにつれて、物流が追いつかないという課題が浮上してきた。

「ラストワンマイル問題が注目されていますが、実は“1.5マイル問題”も見過ごせません。大きなプラットフォーマーで何か買い物をした場合、通常は大きな物流倉庫から地域の小さな配送所に運ばれ、そこから各家庭に届けられます。物流量が増えてくると、小さな配送所の手前に中継施設を設けたほうが効率的に運べるのですが、中継施設は規模の問題で大手が開発したがらず、ニーズがあるのにほぼ手つかずの状況。そこを私たちが何とかしたいと思っています」

物流分野で事業化を進めているプロジェクトがもう1つある。コールドチェーン、つまり冷蔵や冷凍の倉庫だ。コンビニで冷蔵・冷凍食品のスペースが拡大しているように、冷蔵・冷凍のニーズは高まっている。しかし、この分野も物流インフラが追いついていない。冷蔵・冷凍用の倉庫は、最初から専用の設計が必要で高コストになるからだ。しかし投資を上回る収益が見込めればビジネスになる。

「国土交通省は日本のコールドチェーンをアジアに輸出する『ASEAN スマートコールドチェーン構想』を19年に発表しています。ここに投資家の資金を呼び込むことができたら、日本経済にもプラス。ぜひ実現したいですね」

ビジョンに合っていれば新規事業に壁は設けない

ショッピングセンターの再生から始まり、不動産開発を中心に幅広い事業を展開してきた霞ヶ関キャピタル。しかし、必ずしも不動産開発にこだわっているわけではない。

「今後も新規事業を展開していきますが、ベースにあるのは、課題を価値に変えること。不動産開発で解決できない課題なら、別の手段でアプローチしてもいい。5年後、10年後には医療系事業をやっている可能性だってあります」(河本氏)

軸がブレなければ、どんな挑戦もありうる。その方針が社内で共有されているため、社員からは活発に新規事業の提案が上がってくる。フラットな組織で経営層と現場が近く、社員が役員にアイデアを直接ぶつける風景も日常的に見られる。

提案がしやすい環境は、社内に多様な人材がいることとも関係があるだろう。社員のキャリアを見ると、不動産業界出身は2割弱。金融機関やファンドのほか、商社や事業会社の出身や、弁護士、会計士もいる。社内に多様な視点があるからこそ、従来のデベロッパーの発想にはないアイデアが生まれる。

同社は、事業メニューを拡大するため、今後もさまざまなバックグラウンドを持った人材を求めていくという。事業会社の経験者からPRやエンジニアなどのプロフェッショナルまで幅広く採用を検討中だが、「突破力のある人に来てほしい」と河本氏。社会課題は、何らかの壁があるからこそ課題として存在している。その壁がある限り、霞ヶ関キャピタルの挑戦に終わりはない。