「神対応間違いだった」元お客様相談室長の警鐘 「悪質クレーマー」から中小企業をどう守るか
緊急性を要しない案件でも「取りに来い」と言ってきて、手土産を持ちお客さまのところへお詫びに行く場合、手土産代や交通費、人件費を考えると100~300円のお菓子が1万円以上になるケースもあります。
フリーダイヤルもそうです。20年ほど前に「お客さまのために」と各社が右へならえで一斉にフリーダイヤルを導入しました。企業がフリーダイヤル費用を負担するのは、原因究明や再発防止という意識からではなく、お客様が喜ぶカスタマーサクセスのためだと勘違いしていたと思います。
いまだにフリーダイヤルを貫いている会社もありますが、セーフティーネット的な役割は電話だけでなくなりました。料金の安いナビダイヤルに切り替えた会社も多いです。
大手の過剰な対応が中小企業を苦しめていた
――長く続いた慣習を変えたきっかけは何だったのですか。
カルビーから日本菓子BB協会に出向した2015年、あることに気付いたからです。菓子業界は業界全体の売上高の約8割を大手30社ほどで占めています。が、中小企業もたくさんあります。中小の菓子メーカーが大手の過剰なクレーム対応で大変な思いをしていました。
中小企業には営業マンが全国に3、4人ほどの会社もあります。大手がやっているような対応はとてもできません。大手がクレームに過剰対応することで「あの会社ではこれぐらいやってくれたのに、おたくはやってくれないのか」と言われていたのです。理不尽な要求を断ることができなくなってきた企業側の非もあります。
そこで業界全体で統一した対応をしようと2017年に「現物がなければ、かわりの商品は送りません」とルールを決めました。スタートしてから今年で5年ですが定着してきました。