メディア協力:東洋経済新報社
藤岡 良樹氏
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)執行役員の藤岡良樹氏は、企業の意識調査の結果などから「これまでオープンソース・クラウド利用を躊躇してきたお客様が、今後は積極的に利用しよう、という方向に変化しつつあります」と報告。「変革期を迎え、CTCがクラウド市場で提供できる価値、サービスをお伝えしたい」と述べ、フォーラムは幕を開けた。
ジェネラルセッション
ビジネスクラウド最前線
経営とITのプロが語る、
クラウドへの期待と実体
菊地 哲氏
2010年に約1億2800万人でピークを迎えた日本の人口は、この5年間で秋田県分に匹敵する約100万人が減少した。50年までには、東京、大阪、愛知の3都府県の人口の合計にあたる約3000万人減となり、日本は世界に先駆けて少子超高齢化が進む。そんな厳しい時代に向けて、CTC代表取締役社長の菊地哲氏は「高齢化と同時に進行するIT化の流れを融合させ、高齢化社会の課題を解決できれば、日本は世界に先行できます」と、社外取締役でもある早稲田大大学院教授の小尾敏夫氏の説を引きながら、ITの可能性に言及。「CTCも、今年4月にクラウド・イノベーション・センター開設など、イノベーション創出に向けた体制を整え、ITによる豊かな社会実現のために取り組みたい」と、未来ビジョンを掲げた。
大久保 忠崇氏
そのCTCが、企業がクラウドに対して持つ懐疑的な先入観を変えている。CTC取締役兼常務執行役員CTOの大久保忠崇氏は、企業が安心して使えるCTCのクラウドサービスへの取り組みを紹介した。CTCは企業活動に重要なシステム環境を預かれるように、高いレベルの確実性と堅牢性を備えたデータセンター事業の運営から、機器の保守、システムの開発から運用受託まで一貫してすべて自社リソースで管理運営していること。さらに、世界でいち早くセキュリティ情報を入手できるように、米国のセキュリティサービス会社と提携していること。大久保取締役は「こうした当社の取り組みは、お客様から信頼を得て、年50%のペースで成長しています」と胸を張る。
中でも、企業向けクラウドで重要なポイントの一つが障害発生率の低減だ。CTCは、運用サービスまでを含んだクラウドインフラ基盤サービスである「ElasticCUVIC(エラスティックキュービック)」の技術強化に向けて、今年2月に、ミッションクリティカルな基幹システム向けインフラで定評のある米国バーチャストリーム社と提携した。高度の安定稼働を実現してきた同社の独自技術を取り入れ、よりセキュアなサービスを目指す。また、CTCのクラウド上でのソフトの動作確実性を向上させるため、ERPをリードするSAP社との協業を開始。データセンター間の接続強化のためNTTコミュニケーションズとも提携関係を結び、サービス品質の向上を図っている。
今後に向けて、CTCが注目している新たな技術動向のキーワードが『ニューワークロード』だ。その一例として最新スマートフォンは、新たにビーコンセンサー搭載が始まり、それを使い、狙ったエリアにセールス情報を配信する新たなサービスも可能になっている。しかし、その実現には、従来型の予測可能な『オールドワークロード』と違って、予測不能な増減をする『ニューワークロード』を処理できるシステムが求められている。
CTCは、クラウドOSのOpenStack(オープンスタック)上でアプリケーション自身が処理内容に応じてインフラを自動制御する仕組み『RACK』を開発、オープンソースとして公開するなど、『ニューワークロード』に対応したクラウド技術の発展に貢献している。大久保氏は「企業のみなさまが安心して使えるクラウド環境を構築し、それをサービス提供することが当社のミッションです」と語った。
ブレイクアウトセッション
ユーザー事例
仮想化基盤を作ってみて、使ってみて、
あらためてわかった事
赤塚 典久氏
システム部システム開発グループ
主任調査役
吉永 聡氏
12年度に仮想化共通基盤を導入した鹿児島銀行のシステム部長の赤塚典久氏が、鹿児島県と同行を紹介したのに続き、同部システム開発グループ主任調査役の吉永聡氏が、同基盤の導入について説明した。
同行は、乱立していたサーバーのうち、統合効果が高いと見込んだ138台を、仮想化共通基盤によって12台に集約する取り組みを進めている。吉永氏は、最新サーバーでも旧OSが利用できるので、サーバー更改に伴うアプリの改修が不要で更改期間を短縮できることや、サーバーを停止せずに保守が可能になるなど、仮想化のメリットが多いことを説明。「サーバーの台数が減ったことで、限られた予算でも信頼性の高い機種を選択でき、障害頻度も減った」と語った。
ただ、行員だけで仮想化共通基盤を運用するにはノウハウが不足していたため、同行は、CTCのインフラ運用サービス『CUVICAvail(キュービックアベイル)』を採用。CTCのレポートやアドバイスを受け、最適なリソースの再配分もできるようになった。吉永氏は「今回は、将来のクラウド推進に向け、移行環境を整えるためのステップ」と述べ、さらなる効率化への取り組みを検討している。
西武グループの
ITインフラ共同・標準利用について
前川 芳範氏
西武グループの事業は、都市交通沿線事業、ホテル・レジャー事業、不動産事業など多岐にわたる。グループの持株会社、西武ホールディングスの情報システム部は、各社のITインフラの共同・標準利用の推進がミッションだ。同部マネジャーの前川芳範氏は「システムインフラに関する運営ノウハウの共有、人件費を含めた運営コスト軽減を図り、グループ会社が協業しやすい環境を整えたい」と話す。
グループのクラウドインフラにおいては、利用認証、電子メールやスケジュール管理、ID管理、社内情報共有など基礎になるシステムを、従来から進めていたストレージ、サーバのクラウド化に続いて、グループ展開を開始した。グループ会社のシステム化や更新時期にあわせ、順次、導入できる形態をとることにした。前川氏は「こうしたやり方では、リソースを後から自由に追加できるクラウドインフラのメリットが生きる」と、語る。CTCのクラウドインフラ『ElasticCUVIC』を選定した理由については「データセンターにカスタマーエンジニアが駐在していて安心度が高い。しっかりしたサービスを比較的安価に提供している」と、品質とコストのバランスを挙げた。
変化の激しい年金制度を支える
システムインフラのあり方
システム構築・運用を手がけるシーエーシー(CAC)は、新たに提供を開始した年金管理パッケージ『Micmari(みくまり)』のインフラに、CTCの『ElasticCUVIC』を採用した。一部競合関係にあるCACも、その安全性や拡張性を高く評価している。
加藤 肇氏
信託銀行向けの年金システム開発運用を受託しているCACは、12年の年金綜合研究所設立にかかわるとともに、年金業務を行う信託銀行や生命保険各社が共通で利用できる年金管理パッケージの開発に取り組んだ。同社執行役員 社会保障ビジネス本部長の加藤肇氏は「年金制度は変更が頻繁にあり、その都度、システム変更も必要になる。全体の半分程度でも、システムを共通化できれば、コスト軽減に貢献できる」と話す。インフラには、金融情報システムセンター(FISC)基準に適合したデータセンターを持つ安全性の高さ、膨大なデータの保存・処理が可能な拡張性の高さといった条件が課される。加藤氏は「MUST18項目を満たし、WANT23項目の評価との合計で最高点だったのがCTC。今後は、年金システムの海外展開も検討しており、CTCの東南アジア拠点網にも期待している」と語った。
クラウド型BPO
サービス利用による業務効率化への挑戦
玉田 智久氏
食品卸大手の日本アクセスは業務処理自動化サービス『eAssist』を使い、事務的作業の負担軽減に取り組んでいる。eAssistは、人による操作が必要とされていた定常的処理でも自動実行できるロボットプログラム。同社営業統括本部営業企画部長の玉田智久氏は「業務効率化で、戦略的業務へシフトできる」と期待する。
同社は、支社・支店など場所別の損益データを、得意先別にも管理する取り組みに着手したが、手作業が必要な処理が多く、セールス担当の負担増に悩んでいた。eAssistは従来、システムで処理できず、手作業になっていたコストや収益率の計算などを自動化。また、WEBページ上から手作業でダウンロードが必要であったEC事業者の支払案内データ等の処理もeAssistで自動化。自社の商品コードと紐付処理を行ったうえで、請求データと照合し、所定のWEBページに自動格納できるようにして、従前延べ8時間必要だった業務を実質ゼロへ短縮した。玉田氏は「ロボットは、システム化の範囲を広げてくれる」と評価する。同社は、小売業者の会員カードを活用し、店側にクーポン処理などの負担をかけずに、顧客各人に合わせたプロモーションを行うサービスをCTCと共同開発するなど、IT分野で取り組みを強化している。
ブレイクアウトセッション
海外先進事例
USの先進事例から見る
基幹系システム基礎のクラウド活用術
ロドニー・ロジャース氏
CTCが新たに提携したバーチャストリーム(Virtustream)社は、仮想マシンを細かく分割する『μVM(マイクロ・ヴィエム)』という独自技術を使い、信頼性を高めたクラウドサービスを欧米の企業や政府機関の基幹系システム向けに提供している。同社社長兼CEOのロドニー・ロジャース氏は「われわれは、企業向けクラウドにとって重要な可用性や、セキュリティ、コンプライアンスなどの点で高い評価を受け、リーダー的な存在」と自負する。
ロジャース氏は、米ゴム製品メーカーのベイヤンス・テクノロジーズ社のシステムをクラウド基盤に移行させた事例を紹介。「世界21カ国で展開しているビジネスデータ移行を6カ月以内に完了し、システムのパフォーマンス、災害復旧対策なども向上させた。30%のインフラコスト削減も達成し、営業利益率がアップしたことで、財務的な魅力も増した」と、効果を強調した。日本のCTCとの提携について、ロジャース氏は「欧米以外の地域では、サービスプロバイダーに当社技術を利用してもらったり、企業にソフトウエアを販売したりすることで、グローバル展開を進める」という戦略を示した。