だんだんと、休み時間、独りでいることが多くなりました。そこで休んだり仮眠を取ったりして、集中力を回復させて、授業に使おうとしたのです。
でも、そうすると、淋しくなります。誰かに話しかけてほしくなります。複雑な議論はできなくても、「調子はどうだい?」とか「ランチは何を食べるの?」なんてなにげない会話がしたいと心底思うようになります。
そんな中、クラスメイトであるイギリス人男性が時々、話しかけてくれました。
ですが、彼には「かわいそうなアジア人をなぐさめている」という雰囲気がありました。イギリスの中流階級出身の白人として、クラスで唯一のアジア人を心配しているという匂いでした。
無意識の優越感
別に自慢げとか偉そうな態度を取っていたわけではないです。彼の名誉のために言っておけば、彼はとても優しい人でした。だから、話しかけてくれたのです。
でも、どこか、「かわいそうなアジア人には優しく接しよう」という意識を感じました。それは、無意識の優越感だと思います。
本人に言っても、キョトンとしたまま、「だって、君はかわいそうだから」と答えるような雰囲気でした。
さやかさん。僕は生まれて初めて「人間として見下されるとはこういうことか」と感じました。
でもね、それでも、話しかけられることはうれしかったのです。淋しさが紛れるから、たとえ、見下されていると感じていても、独りぽつんと中庭のベンチにいる僕に声をかけてくれることはうれしかったのです。
これは、強烈な体験でした。あきらかに「かわいそう」と見下されている相手からでも、話しかけられるとうれしいという感覚。生まれて初めて経験する、予想もつかない感覚でした。
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