クリエイティビティが刺激される地
兵庫県丹波市にIT企業が注目

右:霧を生み出す寒暖差により、一層うま味が引き立つ農作物も丹波市の大きな魅力だ
大都市圏から約1時間
自然豊かで災害が少ない
丹波市は兵庫県中東部に位置し、京都府と市境を接する。緑豊かな山間の同市が今、IT企業からにわかに注目されている。というのも、兵庫県が2013年に「多自然地域へのIT関連事業所進出支援」の制度をスタート。これに呼応して、対象地域にあたる丹波市も独自の補助制度を14年に開始したからだ。この結果、建物賃借料の75%、通信回線使用料でも同率の補助を3年間受けることができるなど、手厚いサポートが準備された。制度開始以来、県への問い合わせは多く、なかでもIT企業からの指名が集中しているのが丹波市なのだ。
実は同市は、以前から積極的に企業を誘致している。固定資産税の3年間課税免除や工場等の立地に伴う初期投資の補助など、全国有数の優遇制度を備えていることもあって、06年以降に限っても、17社が新規に事業所を開設した。自治体側の取り組みも去ることながら、進出企業が増加したその理由は丹波市の四つの特長に集約される。
まずは、交通の要衝という立地だ。もとより同市は京都にも近く、日本海と瀬戸内海、双方から物資が盛んに往来してきた歴史がある。現在、大阪市、神戸市には、高速道路を利用して1時間程度でアクセスできる。舞鶴市には約50分。北近畿豊岡自動車道の延伸で、豊岡市へのアクセス時間も短縮される見込みだ。
第二に、豊富な地下水に恵まれていることが挙げられる。加古川水系の源流を市内に有し、井戸水はそのままでも飲用に適するほど良質だ。洗浄や冷却の工程が必要な製造業はもちろんのこと、食品加工業も進出しているというのもうなずけるところだ。
丹波ブランドの農産品も見逃せない。「丹波大納言小豆」は、この地が発祥とされる。ほかにも「丹波黒大豆」「丹波栗」「丹波の山の芋」など、特産物は枚挙にいとまがない。都市近郊の農産地として多種の野菜・果物を産することもまた、食品加工業の進出を促し、当地での暮らしやすさにもつながっている。
さらに特筆すべきは、災害リスクの低さだ。同市南部では「丹波竜」の愛称で知られる恐竜の化石が、密集した状態で相次いで発見されたという。地殻変動が少ないことの証左で、大規模な地震被害の記録も残っていない。この特色が、IT企業にも大きな魅力となるわけだ。
