三菱総研「グループDX」大幅強化に見せる気概 複雑化する社会課題解決へ、生かすシナジー

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政策支援などのシンクタンク機能に加え、企業経営戦略をサポートするコンサルティング機能を持つ三菱総合研究所(以下、三菱総研)。社会課題解決企業として、価値創造プロセスを全体最適化し、実装領域を担うグループ会社との連携体制を強化している。この「グループDX」を推進することで、はたしてどのようなシナジーが生まれているのか。三菱総研 執行役員の伊藤芳彦氏と、三菱総研DCS代表取締役社長の松下岳彦氏が本音を語り合った。

グループ会社同士の連携を強化した理由

――グループ会社の戦略的連携強化に踏み切ったのはなぜでしょうか。

伊藤 これまでも連携の強化に取り組んでいましたが、DXに的確に対応するということが、アクセルを踏み込む契機となりました。DXプロジェクトは、従来のITプロジェクトと異なり、デジタル技術や実装まで見据えて戦略立案からコンサルティング、実装まで一貫して支援することが求められます。それこそが、企業の財務的な成長はもちろん、企業が本来的に持つ社会的な使命の実現を促すことにつながります。当然さまざまな知見が必要です。オペレーションの領域もカバーしなくてはなりません。幅広いパートナーとの共創が必要だと考え、そのコアの部分として、実装領域を担うグループ会社との戦略的連携強化を進めています。

三菱総合研究所 執行役員 デジタル・トランスフォーメーション部門長
伊藤 芳彦

松下 社会課題が複雑化、多様化する中で、異なる強みを持つプレーヤーの連携による課題解決力、いわゆるコレクティブ・インパクトは、大きな可能性を秘めています。これからの社会に必須であるDXに着目して、三菱総研ならびに三菱総研DCSそれぞれに、課題解決のハブとなるDX専担組織を設置したのが、2020年10月のことでした。両DX組織の協働によってさまざまな案件対応が進むにつれ、その周辺領域である営業やマーケティング部門も次々に連携していったことは、必然の成り行きであったと思います。

――改めて、グループ会社各社の特徴を教えてください。

伊藤 中核は三菱総研を含めて4社。三菱総研DCSと日本ビジネスシステムズ(JBS)、アイネスです。三菱総研が主に戦略フェーズを担います。シンクタンクの実績から、社会課題や制度・規制に対応しつつ経営課題を捉えていくアプローチに特徴があります。例えば、三菱総研DCSとの連携では、2010年のバーゼル規制や、最近だとアンチマネーロンダリングへの対応が特徴的な案件と言えます。

三菱総研DCS 代表取締役社長
松下 岳彦

松下 三菱総研と三菱総研DCSの連携案件は、いずれも高度な制度対応が必要でした。内容をしっかり解析して仕組みに落とす業務を三菱総研が担い、堅牢性の高いシステムを三菱総研DCSが構築しました。両社のシナジーが発揮できた好事例と言えます。三菱総研DCSは、金融業界で豊富なシステム開発実績があります。障害や誤作動が許されない、安定性の高い大規模システムを構築できる強みと、開発から保守・運用、データセンターまでITライフサイクルのすべてをカバーできる強みを兼ね備えています。

伊藤 JBSはマイクロソフトのパートナー企業として多くの実績を有し、クラウドソリューションにも力を入れています。アイネスは自治体の業務に実績を持ちます。三菱総研の社会課題解決および戦略領域の強みにグループ各社が持つ強みを掛け合わせて、企業の経営課題とともに、社会課題も解決するための施策を実現できる。これが、私たちの「グループDX」の大きな特徴だと思います。

グループ横断での人材交流で、ノウハウに厚みが

――三菱総研の制度対応力と、三菱総研DCSの社会実装力が高度な次元で融合していることがわかります。連携強化によって、新たな発見はありましたか

松下 グループ横断の人材交流が進んだことで、改めて組織風土の違いが見えてきました。三菱総研は、多彩な領域において戦略立案に長けた専門家が、高い裁量権を持って業務を遂行しています。一方、三菱総研DCSは、チームによる堅実なものづくりを得意としています。企業文化の相互理解が進むにつれ、両社の連携は補完性が高い、絶妙の組み合わせであると実感しており、顧客にシームレスなサービスを提供できる下地になっています。

伊藤 確かに、連携が深化することにより、グループの新たな強みを発見する機会も多くありました。また、より早いタイミングでの連携、人材交流を進めることで、コミュニケーションや活動自体が随分と洗練されてきたように思います。今では、営業活動から共に行うスタイルが定着し、お客さまにDX実現のプロセスを見越したよりよい提案を行えるようになってきました。

――連携がさらにスムーズになってきたということでしょうか。

松下 戦略立案から社会実装までの連鎖がスムーズになっただけでなく、事業の幅が広がってきました。三菱総研の知見を活用することで、従来、三菱総研DCSだけではリーチが難しかった経営戦略に関わるテーマが増えてきています。お客さまと一緒に仕事をしているメンバーは、日々現場でさまざまな疑問や気づきを得ています。

それを経営の問題と捉えるか、現場改善の課題と捉えるかによって、対応がまったく違ってきます。人材交流によってコンサルタント感覚を共有することで、意識改革・行動変革が進むことを期待しています。また三菱総研も、実装やオペレーションの知識、経験を積み上げることで、戦略立案の高度化と広がりが期待できます。両社の連携には、「伸びしろ」はいくらでもあると言えます。

伊藤 手応えを感じる事例はすでに複数出てきています。例えば、30年前に導入した基幹システムの刷新に取り組む製造業のお客さまのケースでは、DXの取り組みとして、経営管理および生産管理の高度化の検討も並行して進めています。従来であれば、構想を描き、実装方針を決め、開発という流れで、その間検討の主体も変わり、技術的な検討が中心になる過程で戦略と実装が乖離することも少なくありませんでした。今回のケースでは、将来にわたり変革に柔軟に対応していきたいというお客さまの意向を受け、戦略段階からグループで連携し開発の柔軟性と効率性を高めるローコード技術を前提に検討を行い、実装まで一貫して支援をしています。この先想定される市場環境の変化や事業改革に対応して幅広く機能拡張できることから、お客さまにも喜ばれています。

いっそうの連携・共創に向けたポイント3つ

――今後、どのように「グループDX」を展開させ、新しい価値を創造していこうとお考えでしょうか。

伊藤 注目している分野はいくつかあります。例えば、組織・ビジネスモデル・UXなど5つの視点から戦略とアクションの整合性を保ちつつ、DXプロジェクトを的確に推進していく、弊社メソッドのDXジャーニー®や、社内外のデータを駆使して新たな価値を創出するデータアナリティクス、従来はデジタル化が難しかった、経験・専門知識・技能を要する業務領域のAI活用を通した働き方改革などは強化すべき分野だと考えます。これらの分野は、グループ内でもリソースが十分とはいえませんから、幅広いパートナーとの共創を視野に検討を進めています。

松下 ポイントは大きく3つあります。1つ目は、各社の強みをさらに磨くこと。2つ目は、両社の連携のパイプをより太く、より円滑にすること。そして3つ目は、他社との連携も進めて、ソリューションのバリエーションを増やすことです。三菱総研グループとして、エッジの利いた独自性の高いソリューションを数多く提供することで、「グループDX」を大いに拡大し、お客さまと社会の課題解決に貢献していきたいと考えています。

伊藤 その意味では、パートナーとの連携をさらに模索していくとともに、スピード感を上げられるように、M&Aなどの施策も検討すべきだと考えています。そうなればDX人材の大幅な増強も必要でしょうから、多様な人材が活躍できる組織や環境の整備にも力を注いでいきたいと思っています。そうすることで、より大きなコレクティブ・インパクトを有する社会課題解決グループとして発展できると確信しています。

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