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モノづくり進化論 石黒 泰時(デロイト トーマツ コンサルティング パートナー)

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日本の素材産業への期待

ここまでに述べてきたチャレンジを実行し、日本の素材産業がその素晴らしい技術力を遺憾なく発揮することができれば、近未来のグローバル社会課題解決の中心的役割を果たすことも可能となろう。一方で、本当に世界をリードしていくためには、技術力のみに頼るのではなく、イノベーションを継続的に実現していくために組織基盤をさらに強化していく必要がある。日本の素材産業は、顧客との密接な擦り合わせのなか、その厳しい要求に応え続けることで高い技術力を磨いてきた。その一方で、市場の流れを読み、まだ具体化されていないニーズに対して、社内横断的に、または社外や業界外の関係者・関係機関と連携してイノベーションを起こしていく取り組みを実行している企業は、欧米と比較して少ない。

このような特徴を持つ日本の素材産業が組織基盤を強化する上で、特に筆者が重要だと考えるのは次の2つである。

①いかに“未来”志向型組織(Forward looking organization)をつくり出せるか?

未来志向型組織とは「現在の延長線上」でものを考えるのではなく、組織のクセとして将来の世の中の動向を常に考え続け、そこから逆算して自社の進むべき方向性を考え続ける組織である。重要なポイントはこの未来志向が中期計画上のお題目に終わるのではなく、将来の大きな構想と0.5歩先の着実な一歩をいかに組み合わせて自社のオペレーションに落とし込めるかである。

②いかに“フットワークの軽い”組織(Action oriented organization)へ進化させることができるか?

筆者が最近欧米の素材企業関係者と「将来の成長戦略」について議論をしたときに、1つの課題として挙がったのが、「どのようにしたらシリコンバレーのベンチャー企業のように行動できるか」ということであった。これは日本、欧米を問わず、従業員の意識改革も含め、大手企業の硬直的な仕事のやり方を抜本的に変えていくことが、成長を維持・加速していくための必須条件であるという見解である。これを筆者なりに解釈すると、日本の素材企業に今求められていることは、いかに組織としてのフットワークを軽くできるかということである。

日本の素材産業が世界のイノベーションをリードし、製造業の主役に躍り出る日は目前に迫っている。複雑化、不透明化する世界の動向を的確に見極め、変化に柔軟に対応すること、そして、これまでと同様、妥協を許さない圧倒的な技術力にさらなる磨きをかけ、さらに上記のような組織能力を徹底的に強化していくことを応援したい。

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