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気候変動対策に見る中国のしたたかさ 脱炭素社会への適応と先進国への批判

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なかぞら・まな 1991年慶応義塾大学経済学部卒業、野村総合研究所に入社。97年野村アセットマネジメントでクレジットアナリストに。社債や国債を分析。モルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券を経て、2008年10月からBNPパリバ証券クレジット調査部長。11年から現職。(撮影:尾形文繁)

COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)が閉幕した。グレタ・トゥンベリさんは同会議を、「明白な失敗」だと酷評した。筆者から見ても、市場メカニズム(カーボンプライシングやカーボンクレジット)の導入および年間1000億ドルの新興国向け拠出金については合意に至らず、これといって目新しい展開がなかったことは確かだ。

また、地球全体の気候変動対策は、CO2(二酸化炭素)排出量の多い中国が真剣に取り組まなければ、中途半端に終わりかねない。しかし中国は、2060年という脱炭素のメドを変えず、消極的な関与にとどまった印象が拭えない。それどころか「中国に発注したことによる(気候変動の)リスクは先進国が負え」ともコメントし、簡単には先進国の物差しには従わない意志を示す。習近平氏の出席がかなわなかったのも盛り上がりに欠けた。

COP26の終盤に、米中は気候変動で共同宣言を採択したが、メタン排出減などで協力することを決定しただけで、具体策はなし。協調姿勢を演出しただけとのそしりも免れない。

こうなると、中国は気候変動対策に消極的、との見方が広がる。バイデン米大統領も中国を名指しで糾弾した。しかし、はたしてそうだろうか。中国は成長戦略として気候変動対策に取り組むという狙いを外していない。以下の3点からそれは明白だ。

両にらみで実利を狙う

第1に、中国はCOP26の前に気候変動対策のロードマップを公表し、それなりの対応を示した。低炭素のグリーンエネルギーに移行、エネルギー効率を向上させるほか、炭素吸収源(森林)などの強化・拡大を目指す。厳格な管理体制を設け、新規プロジェクトの石炭消費については最新の国際基準を満たすものに限定する。CCUS(CO2回収・有効利用・貯蔵)への投資が進むものと解釈できる。

第2に、このように再生可能エネルギーに投資を傾注する結果、太陽光パネルをはじめとする中国製品への特需が期待できる。太陽光パネルの中国シェアは75%。CO2を世界一出しながらも気候変動対策で利益を上げる仕組みづくりに抜かりはない。

第3に、中国版ガイドラインに基づきグリーンボンド市場を拡大している。今年6月までに1130億ドル発行され、世界第2位の市場規模だ。グリーンウォッシング(環境対策を表面上装う)の可能性はつねに指摘されるが、中国人民銀行はグローバル基準での発行を促している。

ただし、中国の気候変動対策が一枚岩ではないのは動かしがたい事実でもある。中国は炭素集約度(炭素排出量/名目GDP〈国内総生産〉)を指標に脱炭素を目指すとしているが、炭素排出量が減らずとも、GDPが拡大すれば目標数値を達成してしまう特異な指標だ。中国がこの指標を変えない限り、排出量自体がしばらく減らないことすら想定される。

中国はCOP26でも自国に不都合なイニシアチブには署名しなかった。また、この間、エネルギー危機で電力制限により工場を閉鎖せざるをえなかったことに鑑みて、化石燃料を再度重視する可能性も否定しない。

中国の気候変動対策は、つまりは両にらみなのである。さまざまな思惑や優位性を判断し、虎視眈々とほかの国の動きを見て駒を進めているのだ。先進国的に脱炭素社会に適応する措置を取りながら、新興国的に先進国への批判を忘れない。どちらにも動きうる自由度を確保し、より有利な道を探っている。中国からは目が離せない。

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