6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)をめぐっては先行き利上げの強気見通しが示されたことが市場で話題になった。ところが、債券市場はむしろ長期から超長期の金利が低下するという逆の動きになっている。
また、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「経済の再開で供給制約が弱まるにつれてインフレ率は低下する」とし、「景気後退の影響をより強く受けたサービス部門の低賃金労働者とアフリカ系米国人、ヒスパニックの雇用機会改善まで低金利を続ける」と早期利上げ観測を牽制した。
コロナ禍による経済の落ち込みとその反動で始まっている現下の好況を通過した後には、再び低インフレとなかなか改善されない労働参加率との闘いが待っているとの考えを示したのである。すなわち、「日本化」阻止というコロナ前のテーマに舞い戻る。「日本化」は低成長、低インフレ、低金利の継続を指す。最近は低金利を使っての大規模財政拡張も加わった。
ただし、先進国で潜在成長率の低下が続く理由は、マネー不足ではなく、過剰なマネーが消費や設備・研究開発への投資に使われず、貯蓄に回っていることだ。その要因としては、高度成長期とは産業構造が変わり、グローバル化、IT化の進展に、株主主権主義への傾斜、「底辺への競争」と呼ばれる税制の問題も加わって、所得分配に歪みが生じていることがある。
ところが、分配構造の改革は行われず、低金利と財政出動の組み合わせという景気刺激策ばかりが続く。これが景気循環にかかわらず慢性化して、過剰マネーが株式など資産の価格を押し上げて格差を拡大する悪循環に陥っている。
パウエル議長の見立てはおそらく正しく、継続的なインフレ状態は生じないだろう。しかし、対策は間違っているのではないか。米バイデン政権が掲げた抜本的な分配構造の見直しは政治的に難しいが、これに取り組まずに従来の金融財政政策を続けるならば、むしろ日本化からは抜け出せない。
この記事は会員限定です
残り 726文字
