――『LIFESPAN』の中で最も伝えたかったことは。
「老化は病気である」と認めたうえで対策すれば、誰もが自分でしっかりと効果を生み出せるのだということ。老化の要素の80%を担っているのは自分自身の決定であり、残りの20%は遺伝子が担っている。科学の世界では、がんや心疾患、アルツハイマーなど個別の疾患において研究が進んでいるが、それらの最も大きな根本原因が「老化」であるということについては無視されている。
私たちが老化研究で目指しているのは、社会や家族とともに、いつまでも健康で生産的な年月を過ごしていくことができるという世界だ。
――老化を治療できる時代は本当に来るのでしょうか。一概には信じられないのですが。
老化の完治はできないだろうし永遠に生きることは不可能だ。でも老化のスピードを緩やかにして、ある程度の治療を可能にする医薬品は、そう遠くないうちに登場するだろう。それらはすでに一般的に使われている医薬品でもある。
私たちの研究チームが科学誌『ネイチャー(Nature)』(2020年12月2日、電子版)に発表しているが、実験室のマウスで「老化の時計」を逆回転させられることも証明している。老化したマウスの視力が回復することを突き止め、しっかりとしたエビデンスがすでにある。ほとんどの人は、科学の観点でこれほど老化についての知見が広がり、深まっていることを知らない。しかし、この数年でかなりの科学的解明が進んでいる。
――遺伝子治療について多様な考え方があります。
遺伝子治療は子供や大人の体内に(変異のない)適切な遺伝子を追加することで、安全かつ非常に効果のある可能性がある。新技術のほとんどは、それを恐ろしいとか非倫理的と見なす人がいるものだ。この5年間、遺伝子治療によって血液や眼の多くの遺伝病の治療に成功したのを目にしてきた。遺伝子治療で治癒した人に聞いたら、「すばらしい技術だ」と答えるに違いない。
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