「国際的にも病床の多い日本でなぜ“医療崩壊”が起きるのか」。医療法の専門家で、現役の内科医でもある東大の米村滋人教授は早くからこの矛盾を指摘してきた。日本の医療制度の問題点や、感染症法の改正によって何が変わるのかを聞いた。
──行政は病床確保に苦戦しています。法律上、どんな問題があるのでしょうか。
医療機関には、感染症患者を受け入れる法的な義務がない。医療体制を規制する医療法では、どんな患者を受け入れるかはそれぞれの医療機関が決められることになっている。病院の監督権限を持つ都道府県ができるのは、あくまで病院に対する「協力要請」にとどまっている。
命令に近い形で要請できる公立病院と違い、民間病院に対しては強制力がない。「うちは診ません」という民間病院が大半だと手の打ちようがない。日本の医療機関の約8割と大多数を占める民間病院に対する行政介入の余地が小さい仕組みになっている。こうした根本的な仕組みが改められないまま、対応を続けてきた。
──感染症法の改正で、医療機関への患者受け入れ「勧告」や、従わなかった場合の医療機関名の公表ができるようになります。
法改正の全体の内容はかなり拙速。ただ、行政側が医療機関に強く要請できる仕組みになるのは一歩前進だ。協力しないと最終的には名前が公表されるというのはある種の威嚇効果になる。
一方で、本当に受け入れ能力があるのに受け入れを拒んでいるのか、行政側にとって医療機関の内情はわかりにくい。よほど明らかな場合にしか病院名の公表には至らないだろう。むしろ、医療機関全体に自発的な協力を促すという効果のほうを期待したい。そのために、任意の協力を促進する手段も併せて取る必要がある。
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