[Profile]おおうち・けい 1978年大阪市生まれ。12歳で渡米し、2009年ジョージタウン大学医学部卒業。ハーバード・メディカル・スクール助教授。ブリガム・アンド・ウィメンズ病院救急部指導医。コロナ禍で、ERの最前線に立った。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナによる死者数が170万人を超えたという(2020年12月22日時点)。最も多い米国では30万人を超え、1日の死者数が3000人以上の日もある。いまだ収束の気配は見えない。
医療現場は果たしてどのような状況にあるのか。本書は、米国で感染が爆発的に拡大する中、ボストンで救急現場に立ち続けた日本人医師の現地リポートだ。
ハーバード・メディカル・スクールの助教授だった著者は20年3月、大学から指令を受ける。「すべての研究をストップして臨床に入れ」。新型コロナ罹患(りかん)者たちが絶えず搬送されてくる救急救命室(ER)の最前線に立つことになった。
米国のERは24時間、軽症・重症を問わず患者を受け入れる。日本でのような受け入れ先が見つからない「たらい回し」を防げる反面、現場にはより重い負担がかかる。
救急車がつねに5台ほど到着し、1人の医師が同時進行で平均4〜5人、時には10人以上も診る。9時間の勤務で合計25人くらいを診ることも。そして、コロナ禍では「運び込まれる誰もがコロナかもしれない」というリスクと向き合うことになった。
患者にどのような処置をしているのか。そこからは、救急医療の現場では、一般人の想像を超える判断が求められることがわかる。
運び込まれてきた患者の採血をし、血圧、体温、酸素飽和度、血糖値などを測って、対応策を2分以内に決める。酸素マスクを着けても効果が見られなければ、口から咽喉を経由して気管内チューブを肺まで挿入する。
新型コロナ患者の場合、気管への挿管後に意識が戻らないまま死亡するケースが多く、まず挿管するかしないか自体の判断が難しいという。1回の挿管は、2〜3分の短時間で成功させなければならず、技術的にも難しい。また、医療従事者の感染リスクも高い。その気管挿管を1日に何件もこなす医師の精神的な疲労は、いかに鈍感な人でも理解できるはずだ。
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