[Profile]Tara Westover 1986年米国アイダホ州生まれ。両親が連邦政府を頼らないサバイバリストだったため、学校や病院に行かず育った。10代半ばに、大学に進学した兄の影響を受け、大学に通うことを決意。独学で大学資格試験に合格し、2004年に入学した。
リベラル・アーツは、「教養」と訳されることが多い。しかしその語源は古代ギリシャにまでさかのぼり、「奴隷ではない自由人として生きるための技術」の意味を持つという。そんな大げさなと思われるかもしれないが、本書からはその意味を十分に感じとることができる。
モルモン教原理主義のサバイバリストである反政府的な両親の下、学校や病院とは無縁の環境で育った少女が、やがて大学に進学することで成長。ついには英ケンブリッジ大や米ハーバード大で学ぶようになり、学位も取得する。
本書は、そんな彼女の半生を綴った自叙伝だ。一見、ただのサクセスストーリーのように思えるかもしれない。しかし、これほど悲しいサクセスストーリーもないのではというくらいにその軌跡は壮絶だ。
少女時代のエピソードは、読むだけでとてつもない疲労感に襲われるだろう。「道理が通じない」というだけで、ここまでの絶望を与えることができるのかと驚く。
スクラップなどの廃品回収の仕事をしていた父親は、政府も科学も信じないかわりに、陰謀論を信じやすいのでタチが悪い。また、危険な現場で働いていながら、神を強く信じるがゆえに無防備で、何人もの重傷者を出してしまう。
母親は薬用オイルやヒーリングメソッドなど、代替医療を信奉。自分の娘が暴力を振るわれていても助けることはなく、むしろ真実を曲解して咀嚼(そしゃく)しようとする。
そして家族の中でもいちばんひどいのが兄のショーン。暴力や虐待のみならず、相手を精神的に追い詰めることに長けており、しかも執拗だ。
絶望の中で見えた一筋の希望は、ほかの兄弟に大学へ進学した人物がいたことだった。彼は、大学に行くべきであること、ホームスクーラー(自宅学習者)を受け入れている学校が存在すること、そして世界は目の前に広がっていることを教えてくれたのだ。
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