2013年12月、金融庁は全国の地方銀行の頭取に、「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」という1枚のペーパーを配った。
縦軸に各地銀が基盤を置く地域の将来の市場規模の縮小度合いを、横軸に現状の収益性を取ったグラフに、それぞれの地銀が点でプロットされたものだ。
通称、「森ペーパー」。金融庁の検査局長だった森信親氏が作成したもの。今のままでは地銀に将来がないと、再編を含めた生き残り策の策定を地銀に迫ったものだった。
それまでも金融庁は、折に触れて再編を求めてきたが、銀行からは、なしのつぶて。業を煮やした森氏が、客観的なデータを基にしたペーパーを突きつけ、逃げ道をふさいだというわけだ。
その後、森氏は金融庁長官に就任、地銀に対してさらに強硬に再編を迫った。これには、選挙区をバックにした政治家たちが猛反発。そのとき、森氏を全面的にバックアップしたのが菅義偉内閣官房長官(現首相)だったのだ。
「菅・森ライン」。2人の蜜月ぶりはそう呼ばれるほどだった。官房長官の後ろ盾を得た森氏に逆らえる者などいるわけがない。抵抗してきた地銀は次々に陥落、再編への道を歩まざるをえなくなった。
発言の裏に森元長官
だが森氏が任期を終え、長官を退任するのに伴って、その関係も終わったと思われていた。ところが、そうではなかったことが明らかになる。菅氏が自民党総裁選挙に名乗りを上げるタイミングで唐突に発した「地銀の数が多すぎる」という言葉によって。
この発言が森氏の助言によるものだということを疑う者はいない。というのもこの時期、森氏を中心として、あるひそかな計画が練られていたからだ。ゆうちょ銀行による地銀再編ファンドの設立だ。
ゆうちょ銀行が1000億円、事業再生で名をはせた冨山和彦氏が立ち上げた経営共創基盤が1000億円を拠出。再編を志向する地銀や、地方企業を支援するというものだ。
この記事は有料会員限定です
残り 756文字
