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バイデン不況は起きないが対中脅威論は変わらない 混迷する米国 有識者に聞く④ みずほ総合研究所 小野 亮

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みずほ総合研究所 理事・フェロー 小野 亮
おの・まこと 1990年東京大学工学部卒業、富士総合研究所(2002年からみずほ総合研究所)入社。ニューヨーク事務所、経済調査部を経て市場調査部で米国経済・金融政策担当の主席エコノミスト。20年から現職。欧米総括。(撮影:風間仁一郎)

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どんな経済政策をバイデン政権は打ち出すのか。日米の景気や金融政策の見通しを含め、みずほ総合研究所で理事・フェローを務める小野亮氏の分析である。

今回は米国内の「分断」が非常に深いことがよくわかる選挙となった。この4年間のトランプ政権に対する批判的意見や変革を求める願いが強く出ていた気がする。一方でトランプ支持者の再選願望も強く、双方の深い溝が改めて明らかになった。

民意の変化は連邦議会にも表れており、近年の議会の立法件数は過去最少の状況にある。党派対立が加速し、「決められない議会」になっている。

トランプ氏の主張する「バイデン不況」の背景には、個人・企業に対する増税案がある。増減税のネットで10年間に2.4兆ドル規模の増税というのがバイデン氏の案だが、中身を見ると、中・低所得層には減税を行い、増税のほとんどは年収40万ドル(約4200万円)以上の富裕層に求める。

これがすべて認められても、富裕層はさほど痛くない。富裕層増税案が景気に与える影響は無視できるほど小さく、所得再配分だけをうまく実現する。インフラ投資や住宅支援などの歳出拡大策も盛り込まれており、むしろ景気を押し上げていく。「ねじれ議会」の下でも、新たなコロナ対策法を含む歳出増によって、実質GDP(国内総生産)成長率は2021、22年ともに1%ポイント前後ずつ押し上げられるとみる。「バイデン不況」という指摘は当たらない。

当面、コロナ感染再拡大の影響が懸念されるが、FRB(米連邦準備制度理事会)は量的緩和政策を拡充していくだろう。まずは米国債の購入規模を拡大するだろうが、長期債の購入を増やすことで長期金利を引き下げ、経済活動への効果を上げる。株価上昇の要因ともなり、資産価格を下支えしていく。インフレ目標2%の達成は困難で、25年まではゼロ金利政策が続くだろう。現状の株価はバブルではないが、将来的には債務拡大でリスクが高まる懸念がある。

対外政策については、バイデン氏は制裁関税に批判的で、国際協調を重視している。ただ対中脅威論という意味では政権交代でも変わらない。人権など中国の核心的な問題により斬り込むことで、対立を一層激化させる可能性がある。

通商面では米国のTPP(環太平洋経済連携協定)再加盟がありうるが、再交渉が前提で加盟には時間を要する。日本にとって最大のリスクは米中関係が予想以上に悪化すること。日本にとっては米国も中国も重要であり、難しい対応を迫られるだろう。

本インタビューの拡大版を会員サイトにて配信しています。https://toyokeizai.net/articles/-/572556
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