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ライフ #クラシック音楽最新事情

驚異の1人8役演奏が「多重録音」で実現 福川伸陽の最新アルバム『孤高のホルン──映画の世界』

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  • 田中 泰 日本クラシックソムリエ協会 代表理事
福川伸陽の最新アルバム『孤高のホルン──映画の世界』のジャケット。8人の福川による演奏を想起させる

「自分がもう1人いたらなあ」と仕事に忙殺されるたびに思う。音楽家たちも同じようなことを考えるらしいが、彼らの場合、「自分と同じように演奏してくれる奏者がもう1人欲しい」ということのようだ。実は、音楽家たちのこの望みは「多重録音」という方法で実現できる。

ヴィヴァルディ『2本のトランペットのための協奏曲』や、バッハ『2つのバイオリンのための協奏曲』といった曲は、通常、同じ楽器の奏者2人によって演奏される。だが、これらの曲の2つのパートそれぞれを1人の名手が演奏し、その録音を重ねて、1人2役で演奏しているかのような音源とする試みも多く行われてきた。

前者は、フランスを代表するトランペットのヴィルトゥオーゾ(達人)、モーリス・アンドレが何度も手がけたほか、ジャズとクラシックの両部門でグラミー賞を受賞したウィントン・マルサリスの録音も。後者は、20世紀最高のバイオリニストの1人、ヤッシャ・ハイフェッツのものが有名だ。

ピアノでは、グレン・グールドが、ワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲ピアノ編曲版について、2手で弾ききれない部分を「多重録音」でカバーした演奏があるほか、トルコの鬼才ファジル・サイが自らの演奏の録音と共演したストラヴィンスキー『春の祭典』4手版も有名。いずれも当代きっての演奏家だからこそ成り立つ試みに違いない。

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