テクノロジーの力は時として政治を上回る。日本の政治家は長らく「構造改革」を唱えてきたが、日本のビジネスは遅々として変わらない。しかし電子商取引(EC)には変革を一気に加速させる可能性がある。日本にはほかの先進国と違って大きく成長する中小企業が極めて少なく、これが経済の足を引っ張る一因となっている。状況打開のカギがECであり、ECを活用すれば野心的な中小企業は旧態依然とした流通システムを飛び越えて、まったく新しい顧客を開拓できるようになる。
それを象徴するのがオフィス用品通販のアスクルだ。事務用品大手プラスの通販部門として1993年にわずか4人で始まった事業だが、97年に会社として独り立ち。94年に2億円だった売上高は2019年、3874億円に到達した。従業員はおよそ3500人。オフィス用品通販で5割の市場シェアを握る。売り上げの80%が法人向けで、個人向けも含めるとネット経由の販売が85%を占める。
古参の大企業が幅を利かせる法人向け市場で、アスクルのような比較的新しい会社が善戦しているのには勇気づけられる。だが日本経済にとって注目すべきは、そのビジネスモデルだ。アスクルは販売部隊を社内に抱えるのではなく、各地の事務用品店と「エージェント」(正規取扱販売店)契約を結び、提携先の中小企業を成長させてきた。執行役員の宮澤典友氏がこんな逸話を紹介する。94年当時、従業員わずか2人で売り上げも1億円程度しかなく赤字続きだった業者が、「アスクルのエージェント業に本腰を入れるようになってから売り上げは60倍、従業員も16倍に増えた」というのだ。「今では十指に入るわが社のトップエージェントですよ」(宮澤氏)。上位10店のエージェントを通じたアスクル商品の販売は、05年の380億円から18年には1140億円と3倍になった。上位エージェントの売り上げも全体として増えたことになる。
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